炎の城と氷の婚姻_第三章_20

SideギルベルトⅢ


――申し上げますっ!正妃様が自害されましたっ!!
飛び込んできた使者の言葉が一瞬理解できなかった…。



は?自害ってなんだ??
あまりに唐突すぎてさすがのギルベルトもポカンと口を開いたまま硬直する。


「…自害って……自分で死ぬ…のあの自害…だよな?」


何故そうなる?何がどうなっている?
クルクルと脳内を回るハテナマーク。


「はっ。正確にはまだ亡くなってはいらっしゃいませんが…」

の言葉もうまく理解が出来ない。


「えっと…つまり……未遂…か?」

と言いつつ身体はもう動いている。

上着を手に足早に執務室をあとに、後宮へと足を向けつつ確認すると、同じく小走りについてくる使者。


「ご自身でご自身を刺されたようで…」

「容態は?!」

「わかりません。」

「王は?!」

「ご存じで今後宮だそうです。」


男子禁制の後宮内での事をこれ以上聞いても使者からは大した情報は得られないだろう。

そう判断してギルベルトは使者を置いて走り出す。


後宮の門を超え、急ぎ最奥の離宮へ。

出迎えたのは真っ青な顔のゾフィー。

その口からおおよその状況を聞く。


森の国が裏切って水面下で雲の国と結んだと言う事は、城の軍部の中でも極々一部しか知らない事だ。

まだ方針が決まらないためギルベルトが戒厳令を引いていたためである。


刺す前後のアーサーの行動を聞いてギルベルトはおおよその事情を推測する。

やりやがった…と脳内舌打ち。

しかしこの寝室のドアを開けて中に入った瞬間、アントーニョに怒鳴りつけられるのはおそらく自分だろうと思うと胃が痛い。


それでも放置するわけにも行かず、寝室に足を踏み入れたギルベルトを迎え入れたのは怒声ではなかった。


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