「妖精さん…なんだよな?」
思いがけず聞こえて来た声におそるおそるそう訊ねると、光がいくつか目の前をふわんふわん飛び回りながら、クスクスと可愛らしい笑い声をたてる。
(そうよ、ウサギさん)
(ごきげんよう、ウサギさん)
と、やたらとウサギさん呼びされるのはどうだろうとは思うが、まあ、いい。
意思の疎通が出来るようになったのが重要だ。
(……?)
「いや、別に良いんだけどよ、期間限定なのか知りてえんだけど。
限定なら一気に今聞きたい事全部網羅しねえとだし…」
そう、そこだ。
彼女達はこれまでもそこに存在していたのはわかる。
これまでもおそらく菓子を食べながら雑談くらいはしていたのだろうから、今までは自分に声が聞こえなかったのだろう。
今こうして声が聞けるのは大変ありがたいわけだが、期間限定ならイギリスに対して聞きたい事など、急いで聞いてしまわなければならない。
しかしそんなプロイセンの心配は杞憂だったらしい。
(いままでは…ね、イギリスが好きだから邪魔はしなかったけど……)
(ウサギさんが私達のイギリスのこと、ちゃんと好きかわからなかったし?)
(こころから大切にしてくれるか…)
(ずっと大切にしてくれるか…)
(何があっても大切にしてくれるか…)
(((わからなかったから…)))
「あ~…つまり…俺様がイギリスを大切にするなら声聞かせてくれて、相談に乗ってくれるって事でいいか?」
と聞くと、光は肯定しながらふわふわ宙を舞う。
それにホッと息を吐きだすプロイセン。
だがその耳に次に飛び込んできたのは、とんでもない話だった。
(あのね、ウサギさん…)
(安心していいのよ、ウサギさん)
(ウサギさんが心配してた子は、今ちゃんと幸せだから)
(ウサギさんがあの子を大切にしてくれるから)
「…?……あの子?イギリスか?」
確かに心配しているとは言ったが、何故“心配してた”と、過去形?
察しの良いプロイセンだが、さすがに会話が読めなくて、眉をひそめると、光がふわりと肩口まで飛んできて、そっと…まさに秘密を打ち明けるように、耳元で囁いた。
──あなたが昔一緒に暮らしてたあの子は、私達のイギリスなの…
「はああ???」
驚いた。
さすがに驚いた。
いつもふとした瞬間に重なって見える時がなかったとは言わないが、同じシチュエーションで一緒に暮らし始めたので、自分の気のせいだと信じ込んでいた。
そりゃあそうだろう。
数百年前に一緒に暮らしていた人間の女性。
それが男で国体のイギリスだなんて誰が思う?!
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