そんな認識の元、プロイセンはダメもとで話し始める。
「最近…つうか、一緒に暮らし始めてからか…
イギリス、なんか思い詰めた顔してね?
なんつ~か…不安そうなっつ~の?
なんか抱えてんなら言ってくれりゃあ、なんでもしてやんのによ、言ってくれねえどころか、俺様の前では隠そうとしてるみてえだし……
あのな…
俺様な、昔一緒に暮らしてた女がいたんだ。
あ、随分昔の話だから、今はいねえぞ?!
もう数百年前の話だから、相手もとっくに死んじまってるしな……
そいつ、ちょっとイギリスに似た雰囲気の奴でさ、そいつもそんな風にふとした瞬間に思い詰めた顔して、ある日忽然と姿消しちまったんだわ…
………
………
………
俺様心配でさ…随分探したんだけど、見つからなくてさ…
流れる時の長さが違ったとしても、そいつが年取ってばあさんになってもさ、ちゃんと看取るつもりだったんだぜ?
せめて俺様とじゃなかったとしても、幸せに暮らしてくれてたら良いんだけどな…
出来れば自分の手で守って幸せにしてやりたかったなぁ…なんてな…。
なんか困ってる事があるなら全力で助けるし、俺様に対して何か不満があったらなおすつもりだったんだけど、なんにも言わずに行っちまって、無事かどうかも確認できなかったからさ……
だから正直怖えんだよ。
イギリスもあんな思い詰めたような顔で不安抱えて、あいつみてえにいきなり消えちまうんじゃねえかって。
俺様今回も守ってやれねえんじゃねえかってさ…。
………
………
国なんて寿命長くてなんでも出来そうな気ぃすっけどさ、意外に普通の人間の男の方が色々してやれるのかもな…。
俺様が人間の男だったらさ、あいつに赤ん坊の1人でも与えてやれたしな。
そしたらさ、どこか幸薄そうな感じだったあいつもさ、本当に家庭っつ~か、家族っつ~か、そんな感じのもん感じられたのかなとか…
ま、もしかしたら俺様のとこから出てったあとに、そんな人生送ったのかもしれねえけど…それだったら良いんだけどよ……
もちろん俺様はそいつに惚れてたから全く悲しくねえって言ったらそうじゃねえけど、あいつが不幸でいるよりは幸せでいて欲しいしな。
なのにあいつが本当に幸せになれたのかすら、黙って消えられて行方を知らない俺様はわかんねえんだ。
そうだったら良いんだけどなって、願う事しか出来ねえんだ。
まあ…でもそれはもう仕方ねえ。
仕方ねえって割り切るしかねえからさ、せめて今度は…イギリスは幸せにしてえし、幸せでいて欲しいんだよな。
だから…もしイギリスに何かあるなら教えて欲しいし知りてえ。
つか、俺の方はあんた達の言葉聞こえねえわけなんだけどな、逆に俺様はイギリスを幸せにしてえって思ってるって事を知って欲しいし、消える前に俺様に言えって言って欲しいんだけど……」
(あなた良い人ね、ウサギさん。あなたはイギリスの事好きなの?)
「はあ?ウサギって俺の事か?
好きだからこうして…って???」
ちりんちりんと鈴がなるような愛らしい声に、勢いで突っ込みを入れたプロイセンはふと気付く。
気づいてあたりを見回したが、人影はなし。
……へ???
ひたすらに驚いてキョロキョロとあたりを見回すプロイセンの目の前を光がクスクスと可愛らしい笑い声をあげながら旋回した。
(いつもお菓子とミルクありがとう、ウサギさん)
「もしかして…妖精さん…なのか?」
声を聞いたのは初めてだ。
だが、他に考えようがないだろう。
彼女達は人型として視覚できないだけで、確かにそこにいる。
プロイセン、初の邂逅である。
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