フェイク!verぷえ_第五章_4


そんな悲壮な顔をして切り出したせいだろうか…

誰かを救う修道会、誰かを守る騎士団出身のプロイセンは、そんな絶望を背負った様子での申し出を断れなかったらしい。

言われた瞬間に驚いたように目を見開いて固まって…考え込むこと数分。

そこから

「俺様はあんたの事何も知らねえんだけど…あんたの方は俺様の事は誰だか知ってて言ってんだよな?
ま、とりあえず俺様の家すぐそこだから、来るか?」

と、困ったように微笑んで、自分のコートを冷え切ったイギリスの肩にかけてくれた。

「ほんと、どんだけ長くここで待ち伏せてたんだよ。寒かっただろ」

と、全く知らない相手とまさに今自分自身が言ったくせに、まるで親しい相手を心配するような優しいプロイセンの声音に、イギリスは泣きそうになった。



結局、魔法で少女になったイギリスが、身寄りを全て亡くして、もう自身もどうなってもいいかと思っていた時にたまたま街で見かけて一目惚れした相手にどうしても告白をしたかったのだと言う、怪しさ満載の主張をしても、プロイセンは咎める事はなく、居るところがないならここに住んでも良いと言ってくれた。

そして実際、それが社交辞令ではないと言う証というわけでもないのだろうが、翌日には生活用品が必要だろうと、買い物に連れて行って色々買ってくれる。

着替えをまず買って、食器をとなった時、イギリスとしては半分やけくその我儘で、自分の物だけじゃなく、プロイセンとお揃いにしたいと言い張ったら、なんと、

「わかった、わかった。じゃ、そうすっか。
今あるのは本宅にでも送るわ」

と、本当にお揃いや色違いの食器を揃えてくれた。


当時は決して裕福とは言えない財政で、元々浪費家でもないプロイセンは色々を質素倹約していたのは国としての付き合いの時に知っていたので、高価なものではないとはいえ、食器を全て買い換えたいなどと言う主張を通してくれるとは思ってもみなくて、イギリスの方が驚いてしまう。

すると、少女になったためだいぶついてしまった身長差のため大きく身をかがめたプロイセンは、

「お前が欲しいって言ったんだろうが。
なあに呆けてんだよ」
と、ツンとイギリスの額を指先でつついた。
そして当たり前に笑う。

それにイギリスが泣きそうになって
「ごめん…。無駄遣いさせてごめんなさい…」
と謝ると、ばぁか、と、イギリスの頭をくしゃりと撫でながら

「必要なモン買うのは無駄遣いじゃねえよ。
俺様は普段は仕事で外に出てるし、主に扱うお前が気に入ったもんの方がいいだろ」

なんて言いながら、大きな紙袋を片手に、もう片方の手でイギリスの手をひいてくれた。



万事がそんな調子で、そんなに無防備で大丈夫か?とイギリスの方が心配するほどに、あっけらかんと心を開いて、あっという間に2人の生活が当たり前になっていく。

そんな風に心が近づくのは早かったものの、本当の意味で恋人同士になったのは、なんとそれから2年もあとのことだったのは、なんだかプロイセンらしい。

イギリスは当たり前に女になった事はなかったので初めてだったし、驚いた事にプロイセンの方も初めてだと言う事だった。

──そういうのは…ちゃんと特別な相手と手順を踏まねえとだろ…
と、驚くイギリスに少し照れたように言うプロイセン。

それでも机上の知識としては勉強はした…という事だった。

上手いのか下手なのかはイギリスも初めての経験だったので分からなかったが、触れる手がとても大切なものに触れるように優しくて、その手の感触が心地よくて、でも噂通り最初はかなり痛かったのは覚えている。

しかし日々経験を重ねると、ただただ温かくて心地よくて…それも含めて全てが泣きそうに愛おしい日々だった。




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