10年間…と区切ったのは、人間であるという設定を考えると老いない身としては不自然さを感じさせない限度がそれくらいと思ったからだ。
そのくらいあれば人となりを見極められるだろうし、その後良しとなったなら、国としては無限に近い時間があるわけだし、いったん離れて折りを見つけてイギリスとして近づけば良い…
しかし現実が押し寄せてきたのは、予定よりも少しくらい長く一緒に過ごしてもいいのではないか…そんな事を思い始めた頃だった。
アメリカで独立の機運が高まってくる。
イギリスとアメリカの戦争だけに、フランスは当然のようにアメリカ側へ…
スペインもどうやらアメリカにつきそうだ。
国々がどんどんアメリカの側についている状況で、プロイセンもアメリカ側につくらしい。
もちろんそれは国策だ。
プロイセンは一緒に暮らしている恋人がアメリカの敵であるイギリスの国体その人だと知らないわけなのだから、それほど驚くに値する事ではないし、イギリス個人の人間性を否定しているわけでもなんでもない。
しかしそれを冷静に見届けるには、すでにイギリスはプロイセンに心を開け渡しすぎていて、耐えられそうになかった。
その前に逃げよう…
そう決意した時には、ちょうど約束の10年は目前に迫っていた。
決して今の自分がイギリスだと気づかれないよう、跡を追われないよう、細心の注意を払って自分の痕跡を消した。
ことの始まりの時と同様に、妖精達の力を借りて、2人で過ごした頃に出会った人物達の記憶さえ改竄したのだ。
あとにもさきにも、イギリスですらここまでの大掛かりな魔法を使ったのはこの時1度きりである。
こうして何事もなかったように自国内に戻り、プロイセン、ドイツの側には視線を向けないように過ごした。
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