炎の城と氷の婚姻_第三章_13

「視線をそらせるということは…やはりやましい事がおありということですね。」


やましい?何が?どのことをさしている?
やはり国同士の同盟のために王が自分みたいなつまらないものに時間を使っていることをさしているのだろうか…

それとも……



投げかけられた言葉にアーサーの脳内で色々がクルクル回る。

しかしそうして無言のアーサーに焦れたのか、マルガリータは先を続けることにしたらしく、再度口を開いた。


「今なら国に戻れるように口添えをしてさしあげます。

理由は…そうですね、体調不良のため故国の空気を吸いたいとでもすればよろしいでしょう。」


その口から出た言葉の意味はアーサーにとってはますます不明でよくわからない。

自分の様なものにこの国にいるな、森の国に帰れというのはわかるが、それが何故やましい事につながるのだ??
きょとんとするアーサーにさらに焦れたのだろう。

マルガリータは今度はいらつきを隠しもせず、ややきつい声音で言い放った。


「王はあなたに暗殺されるほど弱い方ではありません。

が、目をかけていた相手に裏切られれば心が傷つくでしょう。

あなたにしても失敗するのが目に見えている暗殺で捕まって処刑されるのも無意味でしょう?
国の方にはわたくしに計画が発覚してなんとか国に逃げ延びてきたとでもお言いなさい。

それでグラッド公が雲の国ではなく太陽の国に与する事にしたという事がわかれば、あなたも国に対しての面目がたちましょう。」


「…王の…暗殺?」


ますます意味がわからない。

が、何か不穏な空気が恐ろしくアーサーは青ざめた。


「とぼけても無駄ですよ。

わたくしの母は雲の国の宰相の姪。

そちらからの情報で森の国が水面下で雲の国と結んだことも、それに付随して森の国からあなたの方に陛下の暗殺の命が下ったのも知ってます。

本来なら即処断するところですが、そうすればあなたを弟のように可愛がっていらっしゃる陛下のお心を傷つけるでしょうから、特別に逃がして差し上げると言っているのです。

もしそれを拒否して陛下に危害を加えるということであれば、わたくしにも考えがあります。」


目の前で厳しい表情で糾弾するマルガリータの言葉が遠くに聞こえる。


森の国が…同盟を結んでいる太陽の国の敵国についた?
それを…王は知っているのだろうか……


アーサーはマルガリータをその場において、ふらり…と、離宮の方へと足を向けた。

後ろで何か叫ばれているが、聞こえない。

まるで水の中を歩いているように体が重い。


国である以上、ずっと仲良くということは難しいとは思っていたが、同時に小国である自国の方から大国である太陽の国に盾を突くなどということがあるとは思っても見なかった。

関係が崩れるとしたら、太陽の国の方が森の国を必要としなくなるのだとばかり……


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