生贄の祈りver.普英_7_1

こうして風の国に対する返答はエリザに一任し、ギルベルトは大地の国に手を回す事にする。


今の時点では緩い紳士協定のようなもので互いに不可侵を保ってはいるものの、風の国とは万が一という事もある。

そうなった時に大地の国まで敵に回すのは、武闘国家として名高い鋼の国でもたやすい事ではない。

揉めた時に出来ればこちら側で参戦…最悪でも中立を保たせたい。

(あそこは…確かうちとの国境沿いの湖の国欲しがってたな。
うちの戦闘力ならあそこ落とせるし、それを条件に交渉だな…)

と、そちらは自らが手配する。


理由は風がやたらと挑発してくるため…か。
アーサーの事は言わない。

先日の襲撃も飽くまで風がこちらの国の外交を阻害するための嫌がらせと言う事で話を進めて行くのが無難だろう。

風は何故か紳士協定を破って鋼を挑発。

争いたいような行動がちょくちょく見られるため、飽くまで他2国と本来はやりあいたくない鋼としては挑発してくる風を抑えつつも、すでに良好な関係の大地とはきちんとした形の不可侵条約を結びたい…

そういう形に持っていけば、大地とて鋼に万が一の事があれば次は我が身ということで、協定をやぶって侵攻をちらつかせているらしいと言う風と組むのは危険と判断してくれるだろう。

ということで、大地の方にも書状を書いて使者を送り、そのままアーサーの寝室へと戻った。

憂鬱な諸々から解放されて戻ったその部屋は楽園だった。

可愛いルートが一生懸命自分もアーサーを守ってやるからとヌイグルミを片手に力説している。
それにちょっと戸惑ったような恥ずかしそうな表情を浮かべるアーサーも腕の中にはしっかりとヌイグルミ。

天国?ここは天国か?!
2人とも天使すぎだろ~~!!!!

思わず感涙。
直視できないレベルのその愛らしさにガックリと膝をつくと、

「「陛下っ!!」」
と、2人してヌイグルミをしっかり手にしたまま駆け寄ってくる。

そしてギルベルトの前に膝をつく2人。

しかしそこでルートがハッとしたように

「アルトは寝てないと。
陛下は俺が看るから…」

と、ひょいっとアーサーをだき上げてベッドに戻すのはさすが自分が育てただけあってさすがの状況判断能力だ、と、誇らしく思いながら、ギルベルトは自力で立ち上がってそのあとを追って言う。

「いや、俺様は平気。
2人が仲良くしてくれてるの見て、思わず感動しちまってだな…」
と、言うと、2人顔を見合わせて、互いに少し照れくさそうに笑った。


そうして和やかな空気の中、舟釣りの話をしてみると、普段は喜怒哀楽を表に出さないルートが歓声を上げ、きょとんとしているアーサーにそれがいかに楽しいものなのかを説明している。

ああ…そうだ、ルッツにも協力してもらえばいいか…と、そんな仲の良い2人を見て、ギルベルトはアーサーが眠ってしまったあと、ルートにも風の王の書状と来訪について告げた。


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