機械オタクの腐り方後編-青い大地の果てにあるもの番外8

それはルートとフェリシアーノが恋人で、手を出したいがフェリが天使すぎて手を出せないルートの苦悩というストーリーのBL本だった。


素晴らしいっ!!
開けたなんてものではない!
なんて素晴らしい世界っ!!!

夢中でそれを読破して、その後、本棚の本を片っ端から読みあさる。

そうしてその中から【乙女ジャーナル】という雑誌を見つけた。
ブルーアース内のイケメン達に主に腐った方向から萌えるという趣旨の雑誌。

そこでも残念ながらメインはルートとフェリシアーノだ。
でも単体でギルベルトやアントーニョ、ロヴィーノやフランシスも登場している。



そうしているうちに戻ってくる部屋の主。
本を片手に感涙しているクロウを発見。

最初は焦るも、すぐ我に返った。

「もしかして、クロウさんもルーフェリ好きっ?!!」

キラキラした目で詰め寄られて、目が点に。
専門用語?専門用語か?と

「ルーフェリとは?」
と聞くと、どうやらこの部屋の主はルートヴィヒ×フェリシアーノのカップル、ルーフェリ好きなのだと言う。


なるほど、ルートヴィヒ×フェリシアーノのカップルでルーフェリなのか…と納得しつつ、思う。

どうせなら…ギルベルトのCPが見たいっ!!
そして言ったっ!!

「ギルベルトさんのはないのっ?!!」




結局、当時はルーフェリ主流。
ギルベルト本もなくはないが、非常にマイナー。
むしろエリザと共にルーフェリの良き理解者としての登場が多い。

何故だ?!ギルベルトさん、良いじゃないかっ!!
と訴えるも、CPにするしても相手がいないとの返事が返ってきた。

そう言われればルーフェリは鉄板過ぎて離せない。
あと目立った男性陣としては各本部長。

だが、ブレイン、フリーダム、医療の中で一番接触の多そうなフリーダムの本部長アントーニョは攻めっぽい。
そして…ギルベルトも攻め。

まだ一番体格的にも性格的にも受けに出来そうなブレイン本部長は接点がなさすぎる。
いや、なければ作るのが腐女子というものではあるが、ブレイン本部長相手ならまだ代々不仲な部署のフリーダム本部長の方がかけあわせやすいらしい。

がっくりと肩を落とすクロウ。
でもまあ自分のなりたい立ち位置がわかっただけでも今は良しとしようと思う。

自分はギルベルトが好きだ。
尊敬もしているし恩人だし大好きだ。

でも彼の横に立ちたいわけではない。


ある時は壁になり、ある時は天井になり、ある時は空気になって彼を見守り、彼が彼に相応しい恋人とイチャイチャするのを見守りつつ、あわよくば惚気くらい聞ける人間になりたい。

そして…そんな時が来たら、自分もどうやら女子ジャスティス控室が秘密の編集室となっているというこの【乙女ジャーナル】のドアをくぐる日も来るかもしれない……


そのクロウが切望したシチュエーションは、思いがけず東の方からやってきた。




その子はまさに理想だった。

アーサー・カークランド。
東から来た後衛魔術師。

華奢な身体に透き通るように白い肌。
ぴょんぴょん跳ねた小麦色の髪に驚くほど長い同色のまつ毛に縁取られたグリーンアイはどこまでも大きく澄んでいる。
唇なんてリップを塗っているわけでもないだろうに、薄桃色で可愛らしい。


そんな彼は、どうやら古巣では随分と迫害されてきたらしい。

本部に転属になって歓迎会のあったその日に、古巣のフリーダムに急襲されたのを助け、さらに同日夜に部屋に侵入していたストーカー上司を追い払ったのがきっかけでギルベルトと親しくなったとの情報が、件の初めて雑誌を目にした時の医療本部の女性が手配してくれてクロウの元にも届くようになった【乙女ジャーナル】に記事として載っていた。


これは…これはっ!!!
ギルベルトさんの時代、キタ――(゚∀゚)――!!


ガッツポーズをするクロウ。

脳内では色々な妄想がよぎる。
機械しか取り柄のない自分に出来る事で何か2人の役に立てる事は?と思ったら、ついつい大人のおもちゃの研究にまで手を出してしまった。

もちろん、いきなり本命に使わせるのもなんなので、あちこちにばらまいてみる。
そして売れた。バカ売れした。

そこで本命に日頃のお礼としてプレゼント。
翌日…非常に肌もつやつやご機嫌のギルベルトと、ぐったりと歩けなくなって食堂までお姫様抱っこで運ばれているその恋人の少年を目撃。
そうか…使ってもらえたのか…と、謎の達成感。
自己肯定感は生まれて始めてエベレストより高くなった。

この頃から【乙女ジャーナル】からもスカウト。
2人に使わせたいアイディア商品の企画ページが出来、その実製作を携わるように。

…そしてそれとは別に…前回のグッズの売り上げを研究費に回して新たに片言を覚える学習機能と性格設定をできるAI機能付きの愛玩ぬいぐるみ型ロボットも作った。

これもバカ売れした。

後に軍隊所属の娯楽発明王と言われる事になるクロウの発明人生は、推しの性生活と恋愛を思い切り応援したい、そんな気持ちから始まったのである。











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