炎の城と氷の婚姻_第三章_10

頭が痛い…。

胃も痛い…。


森の国の水面下での離反の話を聞いてから、それまではほぼ自分の執務室のように籠っていた後宮の正妻の公的な方のリビングにも足を向けられないでいる。



体調は相変わらず良くはないようだが、医師としては自分よりは経験も長く色々優れているであろう老医師がついているし、王も後宮の方へと持参すれば書類へのサインくらいはするので、ギルベルトは王宮の方の自分の執務室でひたすら書類に目を通す。


あまりに執務室にこもるので周りには心配されて休息を取るように言われるが、何もしていないと余計に色々考え過ぎて胃を痛くするので、仕事をしていたい。


ほとんど考えもせず、機械的に現在目を通している案件が可か否かを判断しつつ、書類を左右の束に振り分けていると、静かな石造りの廊下を慌ただしく走ってくる足音がする。


ああ…何か起こりやがったのか…。

と、ギルベルトは大きくため息をついて手を止めて、おそらく自分の元に来るのであろう足音の主を待った。


雲の国が何かしかけてきたか、あるいはやはりグラッド公が何か裏切り行為に走ったのか…どちらにしろ良い知らせではあるまい…。


それでも…この膠着状態でもやもやとしているよりは、剣でも振るった方がまだ精神衛生上は良さそうだ…


そんな事を考えたギルベルトの元に到着した使者から告げられたのは、もっとずっと厄介な事件だった。


――申し上げますっ!正妃様が自害されましたっ!!


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