フェイク!verぷえ_第五章_2

その頃は色々に疲れ始めていたのだと思う。

簡単に言うと誰かに甘えたくなった。
ただただ優しくされたかった。


イギリスの人生なんて本当に迫害と侵略の連続で、優しくしてくれる相手は必ずそのあとイギリスを利用しようとしてくるのが常である。

イギリスを国と知って、それでも甘やかしてくれたのなんて、自分は国と結婚すると宣言した、かの処女王くらいではないだろうか…。

ずっとロンドン塔にいた彼女がその姉の死によってロンドン塔を出てイングランドに会ったのは23の時。
当時はまだ外見的には少年だったイングランドを外見通り姉のように愛し甘やかしてくれた。

生まれて初めて得た安らぎの時…
しかし相手は人間で、驚くほどに早くその死を見送る事になったのである。

愛する者の死…それはそれだけで十分悲しいものだったが、さらにそれが自分が依存していた相手だと、耐えがたい喪失感にさいなまれることになることを、その時知った。

かといって…国でそんな風に自分を信じ、また裏切らずに受け入れてくれる相手が果たしているのだろうか…。


無理だ…居るわけがない…それがイギリスの出した結論だった。

国なら誰しも自国を優先しなければ、そもそもが自分が消える。

では…国としてでなければどうだろう?
そうかんがえるくらいには、イギリスは疲れてきっていた。

甘えたい…甘えたい…甘えたい…

クラクラとするほど切望した時に目の前にいたのは、遥か昔消えてしまった旧友の弟。
敵対する相手からは裏切りと策略の軍国などと言われているが、彼は修道会と騎士団を成り立ちとする国らしく、当時味方として対峙していたイギリスには友好的なだけでなく、どこか不器用で気真面目な温かさで接してくれていた。

おそらくイギリスがその年齢に見合わず童顔で体格も細かったせいだろう。

共に歩けば自然に開けられるドア、冷たい風からも暑い日差しからもかばうようにマメに立ち位置を変えて、それでも長く歩けば、疲れないか?休憩を取るか?と確認を入れてくる。

女子どもじゃないのだから…と、他の欧州の国々相手なら振り払ってきたその手も、かの国は軍略という意味合い以外、人間体としての活動においては非常に不器用だが誠実さに満ちていて、イギリスにしては珍しくその気づかいを素直に享受する気になっていた。

それでも…怖かったのだ。
この誠実さが実は国として有利にことを運ぶための方便だったとしたら…と。

そこで最初の考えに戻る。

もし…自分の方が国ではなかったら?
相手…プロイセンの誠実さが性格によるものか、方便なのかがわかるのではないだろうか…


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