炎の城と氷の婚姻_第三章_09

Side ギルベルトⅢ


喜んで良いのか悲しんで良いのか…

ギルベルトは今岐路に立たされている。



国…ということを第一に考えればそれは幸いな事で、喜ばしい事のはずだった。

これから避けられないであろう雲の国との戦い。

それに国内最大の貴族であるグラッド公が全面的に自国に協力するというのだ。


公の妻は雲の国の宰相の姪。


先の戦いではそれでも雲の国に身を寄せる事無く、その隣の小国、霧の国に一時避難という形を取っていた事で今現在、太陽の国でもその地位を確固たるものにしている。


が、ギルベルトから言わせると別に太陽の国への義理だてでもなんでもない。

むしろ別の国にいても雲の国の保護が確実に受け取れるからこその別国避難というだけだ。


あの時太陽の国が滅んでいたならば、先に雲の国に身を投じたどの貴族よりも高い地位で雲の国に受け入れられただろう。


国内で一番油断のならない大貴族…それがグラッド公だとギルベルトは見ている。

その公爵が完全に雲の国を裏切って太陽の国の国防に協力すると申し出て来た。

それは身内からの裏切りを警戒せずに済むだけではなく、逆に雲の国を出しぬけるという、非常に魅力的な申し出である。


しかしその条件が問題だ。

物理的には非常に簡単で、感情的には非常に難しい。


ようはあれだ、現正妻を廃して後宮にあがっている公の娘マルガリータを正妻とし、世継ぎを作る事…という、本来なら全く問題のないものだ。

緑の国が裏切った以上、その王族である現正妻を廃すると言う事は当然ではあるし、その後に、国の功労者である大貴族の娘を正妻にというのもまた、全く問題がないように思われる。

ただ一点、王の感情を考えなければ…という最大にして最難関の問題がなければ…なわけだが…。


この一件がなくとも、王の最愛の正妻である少年をどう扱うべきか、非常に頭が痛いところだ。

王の心が他に移ってくれれば問題はないのだが、幼い頃から知っている王の性格上、それはありえない。

たとえ少年の方が自国の命で王を刺そうとでもしても、おそらく王はそれを許してしまうだろうし、むしろ相手の精神状態を心配するくらいはする。


それでも少年が王に危害を加えようとすれば、さすがにギルベルトでも庇いきれない。

庇いきれないのだが王は庇う。

そこで色々軋轢が生じるのは目に見えているので、正妻…アーサーの元に故国である森の国が方針転換をした事が伝わるような事のないよう、現在森の国の全てを少年の元に取りつがないようにさせている。

結局戦いが始まればなんとかしなければ仕方ないのだが、とりあえずは先送りにして考える時間が必要だ。


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