フェイク!verぷえ_第五章_1

──アルト、アルト……

あ…まただ…、またさりげなく行く手を遮られたのに気づいて、イギリスは少し困惑した。


籍を入れて一緒に暮らし始めて早数カ月。
イギリスの予想…いや、イギリスの知識の通り、プロイセンはほぼ完璧な伴侶だった。

まず容姿が良い。
顔が完璧に美しく整っているのはもちろんのこと、日々トレーニングをかかさないせいか、綺麗に筋肉がついた彫像のような体格をしている。

いつもふざけたイメージがあって気づかれないが、実は共に歩けば男女共に振り返ってしまうレベルの正統派のイケメンだ。

性格は几帳面で、しかし神経質過ぎず、イギリスにとって必要な時間に必要なものを欠かさず用意してくれる。

その日の予定に合わせた時間に淹れたモーニングティ。
朝食はイングリッシュブレックファースト。
それを食べ終わる頃にはきちんとタオルと着替えが用意されていて、イギリスがシャワーを浴びて身支度を軽く済ませると、髪を乾かしがてらセットしてくれ、その後、服装チェック。

いつも忘れ物が多いイギリスの持ち物ももちろんチェックしてくれて、仕事場までは車で送ってくれる。

そうして一旦は帰宅して家事。

しかし昼になると、ビジネスランチが入っている時以外は、美味しいランチボックスを作って来てくれる。

抜けられないほど忙しい時にはそれを渡して帰るが、時間に余裕がある時には一緒にそれを食べる。

その後プロイセンはまた帰宅して家事。
しかしイギリスの帰宅時間には車で迎えに来てくれる。

その後は普通にプロイセンが用意してくれるツマミを食べている間に温められた食事が出てきて夕食。

風呂の湯を張った上に、わざわざ日本から取り寄せた温泉の元入りだ。

風呂からあがればマッサージ。
もちろん夜はきちんとシーツが変えられてメイキングされたふかふかのベッドで就寝だ。

別にその生活に不満があるわけではない。
いや、不満があるなんて言ったらさすがにばちがあたるレベルだろう。

ただ気になるのである。
その過剰なレベルの至れり尽くせり度が。


プロイセンとて本来はそれがスタンダードなわけではないとイギリスは知っている。
元々マメな男ではあるのだが、今のこの状況は異常だ。

以前共に暮らしていた時はプロイセンの方が外に仕事に行っていたというのもあるが、基本的に力仕事と炊事以外の家事は手伝う程度だった。

今これだけマメなのは、一つには1人にしないことで消える危険性を減らしている…そして色々される事に慣れ過ぎてプロイセンから離れる事に不都合を感じるように…そんなところだろうか…

別にもう姿を消す予定もないし、そんな心配は必要ないのだが、前回のそれがそんな不安をプロイセンに与えてしまっているのは想定外だった。

…そう…以前一緒に暮らしていた。
プロイセンはその事を知らないが、イギリスは知っている。



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