フェイク!verぷえ_第三章_3


「とりあえずの決戦は今日だな~」

会議の日の朝に遡る。

グーテンモルゲンとの声と共にそんな台詞を吐きながら、ベッドまで朝食を運んでくれる伴侶は相変わらずのイケメンで、不安でよく眠れなかったイギリスと違い、肝も据わっているらしい。

プロイセンは全く臆する様子もなく、いつも通り機嫌良く、ベッド脇のサイドテーブルに一旦朝食のトレイを置いて、イギリスにアーリーモーニングティのカップを渡してくれる。

プロイセン自身は本来はコーヒーの方が多かったが、香りが混じるのが嫌だと言ったら、自分の方が譲ってくれて、今では朝から紅茶派だ。

もっとも地域によってはドイツもイギリス以上に紅茶を常飲している場所もあるらしいので、紅茶が嫌いというわけではないらしい。

淹れるのも紅茶に関してはうるさいイギリスでも普通に飲めるくらいに上手に淹れるし、朝食もイギリスに合わせてたっぷりのイングリッシュブレックファストにミルクたっぷりのブレックファストティ付きだ。

プロイセンの悪友2人は亡国で国体としての責務の無くなった彼の事を、ニート的な意味合いで“自宅警備員”などと揶揄していたが、馬鹿にするなどとんでもないと思う。

彼はまさに自宅というか、相手の生活全般を完璧に“警備し”支えてくれている。

緻密に管理された時間配分で相手に合わせた食事、お茶、掃除も洗濯も完璧だし、仕事場までの送り迎え、必要なら秘書的なスケジュール管理や事務仕事も滞りなくやってのける。

もちろん、文字通りの警備員としての身辺の護衛など、元病院、元軍事国家としてはお手の物だ。

ここまで優秀な自宅警備員だと、急に失ってしまったドイツは実は不便で大変なんじゃないだろうか…と、イギリスが心配になってしまうくらいである。


おかげでプロイセンと暮らし始めてこのかた、実は朝はそれほど強いわけではないイギリスは、ただ寝ぼけ眼でベッドの中で待機しているだけで、目覚まし用の1杯の紅茶が出てきて、朝食とミルクティを堪能し、そこで初めてのそのそと起きだして顔を洗って歯を磨いて戻れば、きちんと整えられた着替えが用意され、それを適当に身につけると、仕上げと髪のセットは完璧にしてもらえる…等と言う、素晴らしい生活を送っているわけだ。


あまりに至れり尽くせりなので、別に執事や使用人じゃないのだからそこまで完璧にしないでも適度に手を抜いてくれても構わないと伝えた事があるのだが、そう言ったらプロイセンは驚いたように固まった。

「…プロイセン?」
と、衣服を整える鏡越しに視線を向ければ、プロイセンは少しの間なにか考え込んでいたが、

「俺様そこまで色々やってる…か?」
と聞き返されたので、これがプロイセンのスタンダードなのだろう。

「…お前がそれで良いなら良いんだけど…」
「おう、気づいたら手が動いてるだけなんで、やらせておいてくれ」
で、終わった。


というわけで今日も朝から面倒を見られて、イギリスの一日は始まるのである。

まあ、いつもと違うのは、今日はイギリス主催のロンドンで開かれる世界会議があるので、いつもよりも時間が早い事と、ドイツに居てドイツの補佐をやっていた事もあって補佐し慣れているプロイセンが会議前の支度から会議中、会議後まで、補佐についてくれる事くらいか。

自分で言いだした事とは言え、おそらく結婚報告のハガキを見た各国から色々聞かれるだろうし、それに1人で対処するのはやや心もとないと思っていたため、プロイセンが来てくれるのは本当にありがたい。

こうして今日も食事を終えて身支度を整えて、イギリスはプロイセンの運転する車で会議場へと向かうのだった。



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