フェイク!verぷえ_第二章_10

新居をロンドンに構えたのは表向きはまだ現役で国であるイギリスの仕事に合わせるため、実際はボロが出ないようにするためとプロイセンはイギリスに言った。

ドイツ国内にいるとどうしてもドイツとの接触は避けられないし、慣れるまでは避けた方が良い。
主にそういう理由でと…。


それは嘘ではない。
イギリスは1人暮らしだったからそれまでの生活について完全に把握できる者はいないが、プロイセンの場合は生活形態を知られているだけに、ドイツが見れば不自然さがあれば気づかれる可能性もある。

…が、それもプロイセンにとっては瑣末なことだ。
本当に本当の理由は別にある。

以前恋人を作った時は恋人の方が出て行った。
でも今回は自分の方がイギリスの家に入れば、自分が出て行かない限り、この生活が存在しなかった事にはならない。

そんな理由だ。

イギリスを信用していないわけでは決してない。
でもなんというのだろうか…イギリスと一緒にいると、あの頃の…彼女の事がやけに思い出される。

素直じゃないのに実はひどく気を使う性格だとか、料理下手なところ、人のぬくもりに飢えているようにひとたび距離が近くなるとやたらと接触をしたがるところなど、ふとした瞬間にイギリスが彼女と重なった。

この関係は…この結婚はフェイクである。
そんな事をしばしば忘れてしまうくらい、泣きたくなるくらい、プロイセンの中でイギリスとのこの生活がどんどん大切な、失う事が怖いものになっていく。

それでもフェイクなのだ。
この関係はお互いがフェイクだと割り切る事が前提に成り立っている。
だからこそ、本当の事は言えない。

『俺達結婚しました』
と言うハガキを世界会議に出席している全部の国に送ったが、それだけでは心もとない。

どうしたらこの不安は消えてくれる?

朝…起きて腕の中にイギリスが居る事に安堵の息を吐き出し、仕事先に送って行って、一旦は自宅に戻るものの、帰りもどんなに遅くとも迎えに行く。

『レディじゃねえんだから…』
とイギリスは苦笑しつつもそれを受け入れてくれているので、仕事の時間以外はずっと一緒だ。

レディじゃない…でも消えてしまったレディのように、ふ…とイギリスが急にきえてしまうような不安が消えないのだ。


だから…消えてしまわないようにしっかりガードしつつ、消えたくならないように尽くす。

朝には紅茶を淹れて起こしてやり、イギリスがシャワーを浴びて身支度をしている間に朝食の用意。
一緒にそれを食べた後、うまくまとめられていない髪を整えてやって、服装チェック。

会社に送って行き、一緒に食べられそうな時は一緒にランチを食べて、そうでない日はランチボックスを持たせてやって、迎えに行く時間までは自宅で掃除洗濯にいそしみ、夕食の下ごしらえをした上で、迎えに行き、戻ったらすぐ食べられる物をだしてやってイギリスがそれをつまんでいる間に夕飯の仕上げをして、夕飯。

たいていはデスクワークで疲れているから、日本から送ってもらった温泉の元を入れたバスタブに浸からせてやって、出たらマッサージもしてやる。

ドイツにすらここまでやってやってはいなかったが、大サービスだ。

そして就寝。

そこまではないとは思うが、万が一夜中に強襲をかけられても大丈夫なように、同じベッドで眠る。
文字通り眠るだけだが、イギリスはそれまで一緒に寝ていたティディベア代わりなのだろうか…寝る時は意外にも全く抵抗なくプロイセンの懐に潜り込んで抱え込まれるように眠るので、それがなんとなく可愛らしくも懐かしい。

そんな生活を送りつつ数日。

そろそろ全部の国に結婚報告のハガキが到着しただろうか…。

とりあえずの決戦は明後日。
イギリスで開催される世界会議である。

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