あの不可思議で悲しい別れがなければ…いや、先の未来にそれがあったとしても、本当に幸せな生活だった。
確かに10年間と彼女は最初に言っていたのだが、一緒に暮らし始めてすぐそんな事は忘れてしまっていた。
一緒に年をとってはやれないが、彼女が年を取ってばあさんになったとしても変わらず愛せる自信はあったし、元病院なので介護だってお手の物だ。
最後の瞬間まで世話をして看取ってやると思っていたのに……
しかしあとで落ちついて考えてみれば、10年と言う彼女の区切りは、そのあたりが原因なのではとプロイセンは思っている。
彼女もプロイセンが国である事は知っていたので、もしかして老いていく自分を見られたくなかったのかもしれない。
プロイセンの前に現れる前の彼女の人生は一切知らないが、ひどく不幸な人生だったのは何故か感じられて、流されてしまったからには絶対に幸せにしてやろうと思っていたのだが、彼女はその手を放して消えてしまった。
プロイセンの前から消えてしまってから、あの薄幸な彼女は大丈夫だったのだろうか…。
どこかで泣きながら過ごしたりしてはいなかっただろうか…
例えそれが自分とではなかったとしても、幸せな人生を送っていてくれればいいのだが…
心配で心配で、彼女が消えてから100年ほどは、暇があればその姿を探した。
何故彼女がまだ居る頃にそんな彼女の杞憂に気づいて、否定して安心させてやれなかったのか…
本当に最後の瞬間まで愛せれば良かったのに…愛してやりたかったのに……
その事が申し訳なくて申し訳なくて、プロイセンはその後、それまでにも増してそういう意味では女性を遠ざけるようになった。
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