生贄の祈りver.普英_6_1

「ギル、ちょっと良い?」

アーサーの熱も微熱になって、それでも起きてダイニングまでと言うのは心もとないので、新しくルートと反対側のギルベルトの私室の隣にあつらえたアーサー用の寝室で、ベッドわきに置いた小テーブルでの3人での食事。


「ルッツは俺様の甥だけど、実質年齢差から言ったら弟みてえなもんなんだ。
で、早々に跡取りに指名したのは良いんだけど、そうなると皇太子様だからな。
なかなか気の置けない友人てのも出来ねえ。
でもたまたま俺様の姉貴の子に生まれて跡取りに指名されただけで中身は普通の14歳だし?
1人は寂しいだろ?
だから年も近いし、アルトも仲良くしてやってくれな?」

そう言って紹介してやって、実はルートも叔父であるギルベルトと一緒で可愛らしいものが大好きで、ひそかにクマのぬいぐるみ収集が趣味という事を知って、同じくぬいぐるみ好きのアーサーはすっかり心を許したらしい。

ルートもルートの方で、アーサーが眠ってしまってからもしきりに

「アルトは愛らしいな。
俺も陛下と同様守ってやりたいと思う」

と、真面目な顔でギルベルトに告げてくる。


俺様のルッツとアルト、どっちも最高に可愛いぜー!
と、そんな風に仲良くなって大小のクマに囲まれて歓談する2人を楽しく眺めていたある日、寝室のドアがカチャリと開いて、そっと顔を覗かせたのは腹心のエリザだ。

あの日からしばらくして信頼置ける護衛としてギルベルトが不在の時には頼るようにと紹介済みなので、アーサーも彼女の事はよく知っている。

ギルベルトの幼馴染ということもあって、国王である彼にはずいぶんと手厳しい態度も取ったりはするが、アーサーには優しい。

良い匂いがして綺麗で…なのに女性とは思えないほど強くて力もあって、とてもカッコいい女性だと思う。

いつも笑顔で接してくれる彼女は少し厳しい表情で顔を覗かせて、しかしアーサーの視線に気づくと、

「ごめんね。ちょっとギルと仕事の話があるから、ルートと一緒にいてくれる?」
とにこりと笑みを見せた。

こういうところはさすがに女性だからかエリザはとても細やかで、緊張させない術を心得ている。

その言葉にアーサーがこっくりと頷くと、エリザはギルベルトの首根っこを掴んで部屋から引きずり出しながら、アーサーにはまた笑顔でヒラヒラと手を振って出ていった。



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