生贄の祈りver.普英_8_3

「あ~、失敗したのかね?珍しい」

「珍しっすね~。兄ちゃん」


不機嫌に国に帰ったフランシスを迎えたのはモナとシェリー。
二人の妹たちだ。


妹…と言っても腹違いなのでフランシスにはあまり似ていないが、血のつながりがあり唯一“お遊びの相手にならない”ため、心を許す数少ない相手である。



「完全に失敗…ではないけどね。
たかが蛮族と思って舐めすぎてたね…」

失敗…の言葉に綺麗な顔を少しゆがませながら、それでもフランシスは笑みを浮かべるが、二人からは

「ふむ…結局失敗したのだね」

「負け惜しみっすね♪」

と、容赦ない言葉が降ってくる。


まあ…この二人に優しい慰めなど期待するだけ無駄だ…と、フランシスは割り切って、先の事を考える事にした。


「とりあえず…蛮族でも少しは脳みそあるのはわかったから…礼はさせてもらわないとね」

と、フランシスは玉座に身を沈めた。


「たかが眉毛の子供相手になんでそんなムキになるっすか…」

というシェリーにモナが答える

「国としては体面と言うものがあるのだよ、シェリー。
元々うちの国の物を預けておいたら勝手に他国にやられていたという事は大変な問題だ」

「そういうもんっすかねぇ…兄ちゃん、遊び相手なんていくらでもいるんだから、欲しいって言う奴いるなら一人くらいくれてやればいいのに…」


二人がそんな会話を交わすのを遠くに聞きながら、フランシスは軽く目を閉じて考え込む。

今回は本当に油断し過ぎてた。

よもや自分以外があんな小国のさらに側室の腹のほとんど知られていないような王子を欲しがるとは思わなかった。

それでも…替えはきかない。

今では果たして他にいるのかもわからない“森の民“の子孫である少年。
そう、それに英傑と認められる事にこそ意義がある。

鋼の国の王は見たところ、あの子の持つ価値について理解しているとは思えないし、単に子どもらしい容姿の愛らしさにほだされた程度の事だろう。

それならなんとかならないだろうか…
ただ容姿が可愛らしいだけの子どもなら、世の中には他にも多数いる。

代わりになるような子を送りこむ事でどうにかならないだろうか…



「なるべく穏便に済ませたいところだしねぇ…」

美しい柳眉を少し寄せると、フランシスは口元をへの字にして考え込む

どの駒を使おうか……脳裏にズラっと使えそうな人材のリストを浮かべた。


「ああ、あれがいいかな…」

フランシスは思いついたように、ニコリと笑みを浮かべた。

蛮族の方はわからないが、おそらく少年の方のコンプレックスを刺激してゆさぶりをかけるのには、あの子は打ってつけだと思う。


「とりあえず…離間の計だよね、やっぱり…」

ニヤリと人の悪い笑みを浮かべると、フランシスは呼び鈴を手に取った。



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