フェイク!verぷえ_第一章_8

だが意図的に企んだわけではないということは、その言葉に心底ホッと肩の力を抜いたイギリスの様子を見ればわかる。


「あのな?」
「おう」

緊張のあまり少し潤んだ大きな目での上目遣い。
これが世界を制覇した童顔パワーだ。

正直…フランスはイギリスに対するプロポーズに失敗したが、逆にイギリスが全力で落とそうと思えば、フランスは落ちたのではないだろうか…と思えるくらいに強力だ。

少し視線を合わせるように身を乗り出すプロイセンに、イギリスは言った。


──ごめんな?お前の名前出しちまったんだ。

おそるおそる…と言った様子でそう言われて、プロイセンは即聞く。

──何に?


もう他に返答しようがないだろう?
素朴な疑問だ。

だが、それにイギリスはウッと言葉に詰まって、次の瞬間、ぴゃあぁっと泣きだした。
まるでいじめっ子にいじめられた子どものように。

いやいや、俺様そんな酷い事言ったか?
え?え?これで泣く?

とは思うものの、目の前でヒックヒックシャクリをあげる童顔のお坊ちゃんを見ていると、自分がひどくきつい事を言ったような錯覚に陥った。

「ご、ごめんな?おい、泣くな。泣くなよ。
別に怒ってるとかじゃなくて、素朴な疑問だったんだけど、きつく聞こえたなら悪かった。
俺様が全部悪かった。
あ、そうだ、菓子食うか?」

七つの海を制覇した老大国。

そんな顔を知る前は亡くなった兄神聖ローマの友人の一人ぼっちで少し意地っ張りなイングランド。

そしてその後、育て子に手のひらを噛まれて独立されたことを引きずっていたり、かと思えば親友のポルトガルや日本といる時は邪気のない穏やかな姿。

で、その料理を食べて倒れたのがきっかけで出入りし始めた屋敷は一面を花に囲まれた可愛らしい庭に、部屋中に配置された手作りの刺繍やパッチワークなどの数々と、いい加減色々な面を見てきて、見尽くしてきたかと思ったわけなのだが、ここに来て今までプロイセンには向けて来なかった弟属性全開の様子。

もうイギリスは本当に多面性に富んでいる。
プロイセンの予想なんて遥かに超えて、色々な顔を見せてくるのが興味深くも飽きない。

そして可愛い。
別に隠すまでもなく、ことりさんを始めとしてプロイセンは可愛い生き物が大好きだ。
今のでそれにイギリスという生き物が加わった気がする。


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