しかしそこには薔薇の蔓が巻き付いた小さな家の飾りがあった。
ミニチュアではあるが、アーサーの1人くらい余裕で入れるし、なるほどここなら風もしのげるだろう。
──サンクス…
と礼を言うと、少女達は、どういたしまして、と、可愛らしい声で言うとそのまま家の上方をクルクル回った。
──あたしたちのお気に入りの場所なのよ?ここなら寒くないでしょう?入って?
との声に遠慮なく中に入ると、なるほど外よりもそこはかとなく温かい。
ふわっと香る薔薇の香りもどことなく安心感があって、あーさーはいつのまにかウトウトし始めた。
次に目が覚めたのは自分のくしゃみのせいだった。
くしゅん!とくしゃみをした衝撃で目が覚める。
外はまだ明るいのでそう時間はたっていないのだろう。
そう思って起きあがろうとした時、小さな薔薇の小屋の外に人の気配を感じて視線を向けると、そこには最初の日、アーサーを部屋に案内してくれた少年がいて、こちらに向かって手を伸ばしていた。
驚いた。
単純にそこに人がいたのにも驚いたし、それが彼だったのにも驚いて、ついつい悲鳴をあげて後ずさる。
するとあちらもびっくり眼に。
その後ひどく傷ついたような顔になって、次の瞬間ぽろぽろと泣きだしたのだ。
え?え?ええ???
焦って今度はアーサーの方が手を伸ばした。
そして身を乗り出すと自分よりは背の高い少年の頭をそっと撫でる。
何故泣きだしたのかわからない。
泣いている相手を前にしてどうして良いか分からない。
でもとりあえず泣いているなら慰めなければ…と、触れた少年の髪は少し硬くて、でもサラサラで指どおりが良く手に心地よかった。
…何か…悲しい事があったのか?大丈夫か?
そう声をかけると
…ごめっ……すまなっ…い……
と、フルフルと首をふる様子が最初の日の堅い印象から一転、幼子のように愛らしく見えて、アーサーは思わずその頭を胸元にだき寄せた。
それを拒絶する事なく、逆におずおずと背に回される手。
そうしてそれからしばらく、少年が泣きやむまでそうやってその頭を撫で続けていた。
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