朝…貞子はいつも通り早く登校する。
部活の朝練の子達はちらほらいるものの、彼らはたいていそれぞれの部活の教室へと行ってしまうので、教室内に居る生徒はまばらだ。
そっと入って机の中にでも放り込んでおいてもいいのだが、食べ物なので人の目がない場所に置く時間を作って何かあっても嫌だ。
自分で言うのもなんだが、弟妹も大好きなチョコレート入りの美味しいカップケーキで、他人様に食べさせる物ということで、万が一にでも傷んだりしないよう、早起きをして焼いたのである。
気遣いが出来て料理も上手な可愛い女子。
そんなアピールは本当なら鱗滝先輩に直接したいのだが、それでは先輩を狙っているということがバレるリスクが高すぎる。
なので普段は先輩にも伝わると良いなと願いつつ、いつもは先輩が寄こしてくれている後輩達、竈門君と胡蝶さん相手に披露しているのだが、今日、冨岡義勇にもそれを披露するのは彼らに対するのとは意味合いが違う。
菓子の袋に同封した可愛いカード。
それには
『最近、お疲れという事で朝ご一緒できていないんですけど、その後、お疲れは取れましたか?
私、空気が読めなくて親友とああいうことになってしまったので、先輩に何か失礼な事をしてしまってご不快にさせているとかでなければいいんですけど…
ただ本当に疲れているということでしたら、今日は弟妹や友人にあげようと思ってカップケーキをたくさん焼いたので、よろしければ先輩も召し上がって下さい。
甘い物を食べて元気になって下さると嬉しいです』
と言葉を綴っている。
これでスルーされるならまた別の作戦を考えるが、冨岡義勇の性格上それはないだろう。
気を使っている不遇で可哀そうな下級生を自分の気分で無視できるような性格なら、6年間も長兄に対して我慢してはいない。
これで礼を言われてそこからまた接触を再開出来れば、女子力や気遣い上手アピールもできるし、鱗滝先輩の後輩達とだって親しくしている話もできる。
そうすればいくら鈍い冨岡義勇だって、鱗滝先輩と自分が付き合えたのは出会った時にたまたま自分が可哀そうな立場で先輩が同情してくれたからで、出会う順番が違えば鱗滝先輩は絶対に貞子を選んだだろうし、今からだってより先輩に相応しいのは貞子の方だとわかるはずだ。
もちろん貞子の口からそんなことは言いやしないが、気づいてしまえば振られる前に自分から身を引こうと思うだろう。
…そう思ったのだが……貞子は冨岡義勇も変なところで手強いことを知ることになる。
誤変換報告ですʕ´• ᴥ•̥`ʔ痛んだりしないよう→傷んだり⋯かとお暇な時にご確認ください_(_^_)_
返信削除ご指摘ありがとうございます。
削除同音異義語は変換時についついさらっと流してしまってすごくミスが多いんですよね😅
修正しました