冨岡義勇はチョロいと思う。
ちょっと揺さぶって見ただけで容易に動揺する。
弱者を装えば簡単に崩れると思ったのに、意外に崩れない。
態度は優しいのにどうしても引かれたラインを突破できないのである。
弱者としての貞子は可哀そうで手を差し伸べるべき存在と認識していて親切にしてくれても、女子としての貞子には興味がない。
言葉には出さないものの、態度の端々でそう示されている気がする。
自分と冨岡義勇とどこが違うのだろうか…
出会った順番以外にそこまではじかれる要素があるようには見えない。
だから切り崩す努力はしてみた。
まずは病んでみる。
また誰かに陥れられるかもと不安で不安で仕方ない。
同級生の目が怖い。
だから休み時間とか一緒に居てもらえないか?と潤んだ目で見上げれば
「ああ、炭治郎とカナヲに当分自由になる時間は常に一緒にいてやってくれと伝えておくな」
と言われてしまうし、男女の二人だとまた何かあったら…今つきあっていなくても状況が変わったら…あるいは鱗滝先輩の後輩に限って絶対ないとは思うし自分がトラウマになっているのかもしれないが、何か無意識に不快になる事をしてしまって嫌われて亜優の時のようなことになったらと不安になってしまうと訴えれば、
「良くも悪くも隠し事が出来ないタイプの二人だから、腹のたつことがあれば多分その場で直接言ってくると思うから大丈夫。
でももし同学年が不安だというなら、村田に頼むか?
あいつほど心が優しいだけじゃなくよく気がつく奴は俺は知らないくらいの奴だから、もし不死川さんに悪意を持っていそうな人間が現れたらすぐ対応してくれる」
と、別の人を勧めてくれてしまう。
貞子の気持ちに気づいているのかいないのか…どちらにしても近づこうとするとスルリスルリとかわされ続けてた。
唯一の二人きりになれる部活後の門前の相談の時だって、
「いつも私の相談に乗っていただてますけど、鱗滝先輩ご自身は人間関係で問題とか抱えたりすることないんですか?」
と、彼自身のことを聞き出そうとすると、
「あ~、俺は特にないな。あっても自分自身で解決する習慣がついてしまっているし、それが出来ないレベルの問題を抱えたことはない。
で、申し訳ないが杏寿郎を待たせているから、そろそろいいか?」
と、シャットされたうえで、必要な事以外の話をするなら帰ろうと暗に促されて終わる。
決してキツイ言い方もしないし突き放してくるわけでもなく、必要な事には対応してくれるのに、鱗滝先輩自身に近寄ろうとすると取り付く島もなくシャットされる日々だ。
それなら彼女の冨岡義勇の話題から崩して行こうと
──最近私、朝に冨岡先輩とお茶してるんですけど…
と始めても
「ああ、義勇から聞いている。すごく楽しいって言っていた。
今度は義勇だけじゃなくカナヲにもそう言う風に絡んでやってくれ。
あいつも女子で仲の良い友人が少ないから。
…ということでそろそろ…」
で終わった。
本当に、無視はしないが、一言だけそれで完結する感想を述べたあと、帰路を促される。
まあ…顔良し成績良し運動神経良しな上で、無骨な雰囲気があるのに話しやすくて優しい鱗滝先輩は、おそらくこれまで貞子だけじゃなく様々な女子に言い寄られて、かわすのも慣れているのだろうと貞子は理解した。
これは鱗滝先輩の方からは無理だ。
崩すなら冨岡義勇の方から…。
冨岡義勇の方から切り出させて二人が別れてくれれば、その後にはきっと冨岡義勇に取って代わる事が出来るはずだ。
そうしたら今度こそ兄がやらかそうと父がやらかそうと守ってもらえて幸せになれるはず…。
貞子はその時のことを夢想して、うっとりとため息をついた。
何度か最初から読み返していていつも思うんですが、何故みんな錆兎が義勇と交際してる理由を彼女が気の毒だからと思っているのでしょうか?気の毒で可哀相な子というだけで交際するお人好しいませんよね?私が思うに入学式で階段を踏み外した義勇にけ寄た時、見上げてきた涙に濡れた蒼い瞳を見た瞬間、恋に落ちたんですよ!(無自覚)その後、席が隣になって人柄にも好感を持って、だと思うんですよ。クレープ食べに行った時、実弥に困っている事につけ込むみたいでズルいけどって言ってたから好きだつたのは間違いない!気付いてるのって恋柱くらいかもですけどね(義勇ちゃんとっても可愛くて内面もキレイだし錆兎さんとお似合いだわぁキュンってしちゃう!)
返信削除そのあたりはみんな義勇の容姿を気にしていなかったというのが大きいでしょうね。
削除やっぱりコミュ力高かったりする子が目立ちますしね。
あとは眼鏡かけてたから目立たなかったとかも…。
錆兎君は基本外見より内面派なので、隣の席になって義勇の性格が大変よろしい(さんざんイジメられていても絶対に他人の悪口を言ったりしないとか)のにまず好感を持って意識した感じですか、たぶん。