寮生はプリンセスがお好き10章52_落ち込むゴリプリ悩む香

──今日は食ってもOKだけど?
──ううん、いいよ…食べたくない…

とりあえずフェリシアーノにアーサーに事情を話してアルに現状を伝えてもらおうと思っていたら、その前に今回の諸々が知れ渡ってアルフレッドの耳にも入ってしまったようだ。

知ったら落ち込むだろうな…とは思ってはいたのだが、想像以上に落ち込んだらしく、食いしん坊の彼にはありえないことに、食事も摂らずに自室に引きこもっている。



──俺はこの学園を乗っ取ろうとしてた悪の組織の一員だったんだね…

そんなアルフレッドの言い分は香からすると子どもじみていて滑稽さすら感じるわけなのだが、考えてみれば去年まではランドセルを背負った小学生だったわけなのだから、子どもで当たり前なのだ。

普段は食わせすぎないことに苦労をしている香ではあるのだが、食わなくなれば食わなくなるで問題なので、(あ~…面倒くせっ!)と心の中で毒づいてみるが、なんだか自分まで心の奥底でズキズキとした痛みがあって食欲がなくなってしまう。

産まれた時から有無を言わせず王家に仕えるために武術やら学術やらを詰め込まれてきて、人権なんて言葉が辞書になかった自分の人生を振り返れば、万が一今回のことで有力なOB達の勢力からはじかれたとしても王財閥やその他、彼らの周りの亡き父親の友人達からの保護はあって何不自由なく暮らせるんだから贅沢だろうと、そんな感傷を振り切るように考えてみるのだが、心の痛みは消えはしない。

アーサーへの説明とギルベルトへの説得はフェリシアーノに任せることにしたのだが、香はそれも少し後悔し始めた。

正直、誰かと協調して動くのは苦手だ。
他人に任せて待つのも苦手だし、大抵のことは自分でやった方が早い。
そう育てられている。

今回に関して言えば、ギルベルトの説得だけならもう自分がやってしまっても良かったのだが、アーサーを動かすということになると、彼とそこまでの関係性が作れてない。
だからフェリシアーノに任せることになったのだが、もう今回は仕方ないにしても、今後アルフレッドが落ち込んだり何か暴走したりするのを宥めるのにアーサーを使うのが一番なら、自分も彼にその手のことを依頼できるくらいには親しい関係を作っていこう…と、香は少しばかり遅く感じるフェリシアーノの対応にややイライラしながら、そう思った。

自分が一緒に居てもアルフレッドは立ち直るわけではない。
そう割り切って香は彼を寝室に残してリビングへ。

そしてジョーンズ家自体がOB達の攻撃の的にならないよう、そちらはギルベルトを通して自分達も今回の諸々の功労者であるということを広めてもらうため、依頼する文面を考える。

そう、香がしなければならないのはアルフレッドのお守だけではない。
彼に最終的に継がせられるよう、ジョーンズ家を残す方法を模索することも、王から与えられた仕事なのである。











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