寮生はプリンセスがお好き10章50_後処理

──ディックの実家を潰すのは避けたいあるな…
香が一足先に入手してきた映像を見終わってため息交じりに呟く王耀。

今回の騒動は香の責任の範囲外だ。
むしろ協力した特権で他に出回る前に映像を入手出来たことは褒めてもいい。

JSコーポレーションに依頼したのはアルの父親の実家のジョーンズ家であるのはもうこれが各所に出回れば隠しようのない事実で、たとえ大財閥と言えど世界中の要人となっているシャマシュークのOB達を敵対されれば潰されるのは避けられない。

では流すのを待ってくれと頼むかというと、それも無理だ。
銀狼寮のギルベルト個人は了承してくれるかもしれないが、協力者の一人が学園の創始者の跡取りであるフェリシアーノで、彼の目的はJSコーポレーションの依頼を受けて学園に実行犯を送りこむことに協力した、最終的に学園の乗っ取りを企んでいる理事をあぶりだすことである。

全世界がそれに協力してくれるであろうこの機会を逃すとは考えられず、香とフェリシアーノという同じ立場の協力者の利害が違う場合、理はフェリシアーノ側にある以上、ギルベルトが香を優先するということはありえない。

唯一…ジョーンズ家を残す方法があるとすれば現在の同家の当主であるアルの叔母夫妻と中枢を担う側近達を退陣させて彼らとは全く違う人間…つまりアルフレッドを当主につけることくらいだが、アルフレッドの養い親である王がそれを提案したとしても、彼らは受け入れはしないだろう。

そもそもが真っ直ぐ素直に育ち過ぎたアルフレッドが今回のことが実は自分の殺害のために親族が起こした騒動だと知れば、ジョーンズ家を潰すことを避けて自分が継ぐということを潔しとはしないということは想像に難くない。
それどころか下手をすれば自分の親族なのだから自分も学園をやめて連座すると言いかねない気がする。

難しい顔でつらつらとそんな言葉を零す雇い主に、自分自身の働きについては褒められはしたものの、香もニコニコはしていられない。

確かに半年ばかりではあるが誰よりも近くで見て来た雇い主の養い子は子どものようにヒーローに憧れる勧善懲悪大好きっ子で、自分が巨悪の組織の黒幕の一人の親族だと知れば、絶対に連座コースだろうと思う。

あ~これマジ面倒くせっ…と、そちらが厄介すぎて幼馴染の裏切りや処分など諸々について落ち込む余裕もなかった。

というか、いつも飄々としていて話が通じない雇い主が自分の旧友の実家がつぶれるのか…と落ち込んでいるのを見ると、なんとなく自分も落ち着かない。

「…あ~……これ見たら皆マジでギルのことリスペクトだと思うんで…OB達に頭すげ変えて家を残すようにって説得はギルに頼めばOKかと?
ジョーンズ家の方も王大人が説得しても利害あるけどギルならないから、ジョーンズのトップとの交渉もどうせならギルに。
でもって…アルフレッドはギルんとこのプリLoveなんで、そっちの説得は銀狼プリでノープロブレムっしょ」
と、提案してみると、王は
「お前…ほんっとに銀狼寮頼みあるな」
と呆れた顔をするが、結局そうするのが一番色々の成功率が高いのは確かなので、
「わかったある。
金も物品も人材も必要なら王財閥で負担するし、今回協力してくれれば恩は必ず返すと言って依頼するある」
と、最終的にはGoサインを出した。

「おっけ~!じゃ、俺は戻るからっ!」
と、これからギルの説得が大変だと思いつつも、出来れば画像が世界に出回る前にそのあたりを了承してもらうべく、香が王の別宅を出て学園へと舞い戻る。

そうしてまず向かう先は銀狼寮……ではなく銀竜寮だった。













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