寮生はプリンセスがお好き10章43_尋問かお茶会か…

うん?これは何が起こっているのだろう…と、目の前の光景の意外さにアーサーは小首をかしげる。

てっきり銀狼寮を害する目的で押し入ってきた敵とたまたま訪ねて来ていた女性教師が遭遇してしまったものだと思っていたので、彼女を拘束しているのが香というところで、まず驚いた。

どちらが良い悪いは正直わからないが、とりあえずまず言うことは一つだ。

「香、レディに乱暴は良くないと思う。
事情はわからないけど、互いに何か揉めるような案件が起こっていたとしても、まずは部屋に入ってもらって、お茶でも淹れて、落ち着いて話を聞こう?」

そう言いつつ、アンの腕を拘束している香の手をそっと引きはがす。
そうして驚いたように固まっているアンを前に自身の胸に片手をあてて優雅にお辞儀。

「ようこそ銀狼寮へ。
副寮長のアーサー・カークランドです。
友人が失礼しました。
お怪我はありませんか、レディ?」
と、にこりと笑みを浮かべて言えば、ぼ~っと立ち尽くすアン。

「とりあえず…お話は応接室で。
ルート、お茶菓子まだあるよな?
申し訳ないが用意してきてくれ」
と落ち着いて指示をするので、
「わかった。すぐ持参する」
と、アンと接触させることに反対だったルートも思わずそう答えてしまう。

「ありがとう」
とそれににこりと礼を言ったあと、アーサーは
「ではレディ、こちらへ」
と、アンの手を取ってたった今彼女が出てきた部屋へと自ら案内をした。


そうしてアンを連れて戻るアーサーにフェリシアーノもぽか~んとしている。

何が起こっているかわからない…そういう様子で視線で香に説明を求めるが、香も少し困ったように肩をすくめるのみだ。

「レディ、紅茶はお嫌いですか?
コーヒーの方が宜しければ用意させますが…」
と、そんな二人の困惑をよそに、アーサーは愛想よくアンに話しかけている。

アンはと言えば、二人に負けず劣らず困惑した様子で、さきほどまでの決意はどこへやら、
──…いえ…紅茶で……
と蚊の鳴くような声で答えた。

そうこうしているうちにいかつい顔に厳めしい表情を浮かべたルートがなんだか可愛らしいトレイに綺麗に並べた菓子を手に入室。

「失礼する」
と菓子をテーブルにセットしたあとは、そのままドアの前に直立不動だ。

これはお茶会なのか尋問なのか……
もうアンにはよくわからなくて、落ち着かない気持ちのまま優雅にお茶をいれる銀狼寮のプリンセスの手先をジッと見つめることしか出来なくなっていた。










0 件のコメント :

コメントを投稿