寮生はプリンセスがお好き10章41_その頃のプリンセス達

その夜、アーサーはモブ三銃士の一人のマイクと共にルートの部屋で過ごしていた。
いつもなら当然自室にいる時間だが、今日はギルベルトが金竜のプリンセスに助力を頼まれて金竜を混乱に陥れている金竜の寮長ロディの征伐に行っているので、一人は危ないとギルベルトからルートに預けられているのである。

女性や子どもじゃないんだから…とはこの状況ではさすがに言えない。
元々治外法権的なものが多い学園ではあるが、それでも学生の最低限の安全は保障されているはずだったのだが、金竜のプリンセスは金竜寮に居たら身の危険が生じると案じた中等部生達が決死の覚悟で銀狼寮に逃がして来たらしい。

その中等部生達を救出するために、ギルベルトが銀狼寮の寮生達と共に完全武装で出向いているというわけなのだが…。

そういう事情なので、学生の安全を考慮に入れない相手に敵対するということは、その矛先が銀狼寮にも向く可能性があるため、その御旗であるプリンセスのアーサーは現在、決して安全とは言えないのである。


そんなややもすれば緊張するような状況なのだが、ギルベルトが色々と手配してくれて、仲良しのフェリが一緒に居てくれることになっていて、そうなると、プリンセスが他寮に一人というわけにも行かず、銀竜寮の寮長を始めとする寮生全員が護衛として現在銀狼寮に滞在中だ。

その他にもフェリがこちらに滞在すると聞いて自分も来たいと言う金狼のプリンセスのアルも来ていて、しかし金狼のほうはわりあいとプリンセスを自由にさせていることもあり、護衛は香だけということだった。

ということで、さきほどまで金銀狼寮及び銀竜のプリンセスの3人でルートが焼いてくれた美味しい焼き菓子を前にお茶会だったのだが、少し前に来客が来た。

なんと今度新しく赴任してきた噂の新人女教師が銀狼寮のプリンセスに…という話だったのだが、そこで応じようと立ち上がりかけるアーサーをフェリシアーノが止める。

「アーサーを外部の人間と接触させないってギルベルト兄ちゃんと約束してるからね」
と難色を示されて、これはさすがにアーサーも大げさだと思い、
「でも先生だし…。
さすがに危険なこともないんじゃないか?」
と笑って言った。

その先生が実は今問題になってる加害者なんだけどな…と、そこで何も知らされていないアーサーとアルの不思議そうな視線に少し困ってしまうフェリシアーノだが、そこで同じく事情を知る香が
「アーサーが行くとゴリプリもついてくし、そうなるとマジ面倒だし?
銀狼プリの客と空気読まずに揉めたら俺トゥデイが命日っしょ。
まずフェリに用件聞いてもらって、アーサーの離席は最小限にして欲しい。
俺の命のために、プリーズ」
とうまくごまかす。

「アルはおいておいて…どっちにしてもさ、アーサーはプリンセス歴まだ短くて慣れてないから、ギルベルト兄ちゃんのフォローがないところで何か依頼されたりとかして、受けちゃいけないこと受けちゃったりとかも怖いから、俺が話を聞いて判断してアーサーに伝えるよ」
と、それにアルが反論をする前に、今度はフェリシアーノがサラっと話を自分に戻して、有無を言わさず応対しに行った。

確かに…。
暴力的な意味での危険はないかもしれないが、言われてみれば判断ミス的な危険はあるかもしれない。

「さすがフェリだな。
あんなに可愛いのに卒がない」
と感心しつつ、アーサーは香に食ってかかりかけるアルを宥め始めた。


こうしてフェリシアーノが抜けて、アーサーとアル、香とルート、そしてマイクの5人でお茶会を再開する。

そうして20分ほど経った頃だろうか…。

「こんな時間に何の用事だったんだろうね?」
と、香に止められながらもある物を食べて何が悪いと言いながらガシガシお菓子を食べながら言うアルフレッド。

「もしかして…金竜の事とか?」
「いや、でもさ、彼女新人だろう?
寮内で学生が揉めてるとかならもっとベテランが対応しないかい?」
「それはそうだけど…」

確かに普通に挨拶とか顔を見に来たとか言う時間ではない。
こんな時間に何をしに来たんだ?とアルの言葉はそのままアーサーの疑問でもあった。

「まあ…フェリが戻ってきたらわかるんだけど、遅いな…」

何か込み入った話なのだろうか…。
それなら余計に自分が直接聞くより自分よりはプリンセスとしての判断基準がしっかりしているフェリに任せて正解だったかもしれない。

そんなことを思いながらも、アーサーがそれぞれに減った皆のカップに紅茶を注ぎ足そうとすると、香がそっと自分のカップを手で塞いで
「サンキュー、銀プリ。
バット俺、ちょっと様子みてくるから」
と言って席を立つ。

「ゴリプリはそれ以上ゴリラにならないよう…って言っても食べるのやめるわけない感じか…」
と、それでも一応アルに注意をしかけて諦めてため息をついた。

そうして香がひらひらと手を振りながら退室してさらに数分。
遠くはないあたりからいきなり絹を裂くような悲鳴が聞こえた。












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