寮生はプリンセスがお好き10章36_輝く援軍

悔しいがその時の金虎の寮長は実に凛々しくカッコよかった。
金色の虎の刺繍のマントをたなびかせ、剣を掲げて寮生達に号令を下している姿はギルベルトの目から見ても本当にカッコいい。

しかもその号令で揃いの長弓をつがえているのは何故か銀虎寮の寮生達。

あとで聞いたところによると、前回、他に任せてプリンセス達を危険に晒した反省から守りに強いユーシスが自らプリンセス達の護衛として残り、カインが援軍に向かうということになったのだが、接近戦をするであろう銀狼の補佐をするには遠隔が良いだろうという判断で、率いていくのは剣術や棒術が得意な金虎ではなく、弓術を得意とする銀虎の寮生となったらしい。

確かにかなり密着している状況なのに銀虎の寮生達は互いにぶつかり合うこともなく、互いの矢が他の矢の邪魔をすることなく、驚くほど正確にまっすぐ標的に向かって矢を射かけていた。

もちろん敵と違って学生達には極力害を与えないようにと、その矢尻は綿入りの布でしっかりとカバーがされている。

それでも当たれば痛いのだろう。
金狼寮生達は大騒ぎだ。

その混乱に乗じてギルベルトは首根っこを掴んだままのロディと共にカインの方へと避難する。


こうして命からがら駈け寄れば、小さくはないギルベルトから見ても大柄な金虎の寮長はギルベルトの手からひょいっとこちらはギルベルトよりもやや小柄な金竜の寮長を取り上げて、首根っこを掴んでつるし上げた。

「てめえ、毎度毎度舐めた真似ばかりしてくれるなっ。
とりあえずこの戦が終わったら臨時寮長会議と言う名の裁判だ。
すでに学園長の許可は得てるから、逃げられねえぞっ」
とすごんだと思えば、
「縛りあげとけっ!」
と今度は連れていた銀虎の寮生の中へと放り投げる。
そう、比喩ではなく、本当にぽぉ~んとまるで人形のように放り投げて見せた。

すげえ怪力…と思わず呟けば、力だけは軍曹にも負けねえぞと2学年上の先輩寮長は笑う。

そうしている間にも前方に居る金狼寮の寮生達の混乱は続いていた。

──え?俺達なんで軍曹に喧嘩売ったんだっけ?
──うあ…やばくね??
──リンが銀狼がゴリプリ拉致したとか言ったからじゃなかったっけ?
──考えてみれば…でもそれ、何か問題?
──てか、ゴリプリ攫う意味あるか?どう考えても銀狼のお姫ちゃんに敵うわけねえし?
──だよなっ。なんで俺達ついてきたんだ??
──つか、銃とかやばくね?!学園クビにならね??

どうやらリン以外は洗脳されていたらしい。

それが何故解けたかと言えば……
──あ~ユーシスが矢の先になんかふりかけてたが……
と言うカインの言葉で理解した。


そして…ロディとは違い、プロらしいリンは形勢が不利と即判断して逃げ出している。

──逃がすかっ!!
と追おうとするカインだが、ギルベルトはそれを止めた。

「たぶん相手はプロだ。
下手に深追いすると無駄に怪我するぞ。
それよりアンの方を確保してそっちからたどる方が安全確実だろ」
と、ギルベルト的には非常に当たり前のことを口にしたのだが、それにカインはヒクっと顔を引きつらせる。

「…まさか逃がしたとか言わねえよな?」
と口元をヒクヒクさせるギルベルトに
「悪い。確保してねえわ」
と頭を掻くカイン。

「あぁ~?!これだから脳筋はっ!!」
と、計画変更、リンを確保しようと思った時にはすでに逃げられていてため息をつくが、カインは
「あ、でもユーシスがあの女と組織とのやりとりが記録されてる携帯確保してるわ」
と思い出したように言うので、
「それ、早く言えよっ」
と、ギルベルトは再度、今度は安堵のため息を零した。












0 件のコメント :

コメントを投稿