寮生はプリンセスがお好き10章9_モブの視界は広く細かい

そんな風に香水一色で始まった朝だったが、何か違う…とモブースが気づいたのは授業が始まってすぐくらいの時だった。

隣の2年の教室で、なんだか歓声のようなものが上がっている。
それ自体はまあ初めて女性教師が来たことによるものかと思えなくはないのだが、授業が始まって数分。

朝通った時には2年生も特にはしゃいでいる様子もなかったし、よしんばとても愛らしい女性だったとしてそれが原因ではしゃぐなら、教師が入室した瞬間なのではないだろうか…。

何故こんな時間差で?
と思って隣の白モブ仲間のボブに視線を向けると、同じことを考えていたのだろう。
ボブも不思議そうに首を傾ける。

もう片方の隣のマイクもやはり同様の反応で、白モブ三銃士は3人揃ってコテンと同じように首をかしげていた。

常にゲームで思わぬサインを見落とさないようにと様々なことを注意深くチェックする習慣が身についている3人組。

後ろの壁を挟んで隣なせいか、一番後ろに座るモブース達にかろうじて聞こえる程度なので、席が前の方の普段は敏い金銀の寮長達は気づいていないようだ。


──次の休みはマイクは2A、ボブは2Bの様子見な?俺は教室に残って異常がないか見張る。

とサラサラとノートに書いてそれをちぎってササっと左右の友人達に飛ばすモブース。
それを見て頷き合う親友二人。


そのあたり、伊達にオンラインゲームのマルチプレイで協力して困難なイベントをこなし続けてきた仲ではない。
互いに互いの役割を即理解。
適切に動けるのが3人のオタモブの強みである。


こうして授業が終了するとそれぞれ2年の教室に向けて飛び出す二人。

1時限目の授業が終わってもまだ同級生の話題は香水のことで、色々と条件を出しつつ金狼寮の寮生にも香水をと我らが銀狼寮の寮長、カイザー、ギルベルト・バイルシュミットに交渉する香を周りの金狼寮の寮生が応援しているのが見える。

そんなわけでそれでなくても影の薄い二人が真剣な顔で教室を出て行くなんてこと、誰も気にも留めてはいない。

まあ、誰か気づいたとしても、せいぜい『あいつら揃って腹でも壊してトイレに駆け込むのか?』くらいにしか思われないだろうが…。


こうして10分間の休み時間が終わってボブとマイクが戻ってきた。
そしてそれぞれ報告をノートに書いている。
その間、授業の内容をまとめたりノートをとったりするのはモブースの仕事だ。

先にまとめを終えてちぎったノートを回して来たのは2Bに潜入したボブだった。

いわく…特に普段と変わりなし。
念のためしばらく教室に潜んでいたが、話題はと言えばやはり1年と同じく、新任の女教師アンよりも自寮のプリンセスの方が美しくも尊いという類のことや休み中の話、それに試験や学園祭の話などだった。
しいていつもと違うところを見つけるとしたら、普段はわりと同寮の生徒同士訪ね合って物の貸し借りをしたり雑談をしたりしているのに、今日は何故か不自然なほど隣の2Aの生徒が来ていなかったということである。

そんなボブの報告のあとに回してこられた2Aに向かったマイクの報告。
こちらはなんだか異様だった。
まず学生達がこぞってアンを囲んで褒めたたえている。

授業がわかりやすいとか、そういう類ならばまあわかるのだが、愛らしいとか魅力的だとか、あきらか恋情を思わせる発言が飛び交っていたそうだ。
そして何より驚いたのが、その集団の中には絶対にそういう類の惑わされ方をしないであろう2年の二人の寮長も混じっていたと言うのである。


これは…絶対にカイザーに報告しなければ…とモブースは心のメモ帳にしっかりと書き留めて、2時限目はアンは2Bで授業をしているはずなので、この授業が終わった休み時間にはもう一度2Bの教室に行き、授業を受ける前の1時限目のあとと様子が変わるかどうか、細かいところまでチェックするようボブに指示をした。

もちろんマイクの方は再び2A行きである。












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