寮生はプリンセスがお好き10章6_狂った寮長

「…おい、ルークを知らないか?」

高等部の校舎に戻ったギルベルトは銀竜の寮長であるルークを見なかったか、まずは同学年の自分の教室の自寮生達に尋ねる。
すると寮生達はなんだか意味ありげに顔を見合わせた。

「…なんだ?どうしたんだ?」
とさらに聞くと、彼らは少し顔を見合わせて何か相談して、それから代表して一人が一歩前に出る。

「えっと…なんだか銀竜のカイザーだけじゃなくて2年全体がなんか変なんです」
「変??」

ギルベルトに答えつつも廊下の窓の向こうに見える食堂の方に視線を向ける銀狼の寮生。
ギルベルトの視線も自然にそちらへ。

「なんていうか…俺らが授業終わって外に出た時には2年みんなが新任の教師をちやほやと囲むように食堂の方へ歩いてて…」
と続く寮生の言葉に
「…おかしいよな?」
「一人や二人おかしくなるのが居ても、プリンセスを戴く寮生全員がそうなるのって考えられねえんだけど…」
と、周りの1年達がこぞって頷く。

まあ…居場所がわかったなら直接自分の目で確かめるのが早いだろう。
ギルベルトは
「念のためな、お前らは極力新任教師に近づくな。
何か変わったことがあったら即俺に報告な?」
と自寮の寮生達に念押しをして、今度は急いで食堂の方へと足を向けた。


そうして食堂の入り口についてなんだか賑やかな室内を覗くと、小柄な女教師を囲む2年生達の姿が目に入ってくる。
教師は色気があるタイプというより小柄で女というよりも少女のような、どこか庇護欲をそそる雰囲気を醸し出していて、なるほど、年上で教師と言うことを度外視でちやほやしたくなる奴が出てくるのも仕方ないだろう。

それは特に否定はしない。
だが一方でこれはダメだ、と、思う。
他は良いが、プリンセスを第一に考えて寮を盛り立てることを責務とする寮長がそういう輩になることだけは断固として許されないことだ。

思わず厳しくなる表情のギルベルトに何故か気づいたらしい。
女教師がその刺すような視線に臆することもなく、
「ギルベルト・バイルシュミット君でしょ?
今年度最強って言われてる寮長さんよねっ」
とこちらに駆けよってきた。

「あ、あたしね、新任教師のアン・マクレガーっ。
教師になり立てでまだ学生気分が抜けなくて色々失敗も多いけどよろしくねっ」

屈託ない笑み。
それを笑顔で見つめる2年生達。
しかしギルベルトはそのどちらにもどこか嘘くさい、茶番のようなものを感じている。

「なり立てというので一つアドバイスをしておく」
と言う言葉を投げかけたギルベルト。

その口調の硬さと厳しい声音も教師、アンは全く気にならないようだ。

「わぁ~!嬉しいわっ!」
とにこやかにギルベルトの手を取ろうとするが、ギルベルトはそれを拒絶するように軽く払った。

ここでアンは初めて、え??と心底驚いた顔を見せる。
どうやらギルベルトの声が冷ややかなのは、彼がクールな人間だからだで、自分に好意を持っていないからだとは微塵も思っていなかったらしい。

そんな彼女の驚愕に構うことなく、ギルベルトは
「まず教師は職業だ。
対価を得ている以上、学生気分が抜けないことで失敗が多いと言う発言自体が無責任だ。
失敗が多いと言う自覚があるなら、学生と同レベルではしゃぐ暇に対価に見合わない失敗を失くすよう力量をあげていく努力をすべきだ。
以上」
と言い切ると、彼女だけじゃなく固まる周りの間を縫って、銀竜寮寮長のルークの前に立った。

そしてこちらにも彼女に対する以上に冷ややかな声音で言い放つ。

「ルーク、貴様は一体何をしている?」












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