寮生はプリンセスがお好き10章1_魔女の企みプロローグ

──マイクっ、ボブっ、届いたぞっ!!

モブースが通うシャマシューク学園は二期制なので、前期と後期の間に秋休みと言う少しばかり長い休みがある。

その休みの間、多くの寮生たちと同様に実家に帰っていたモブースは、懐かしくも愛おしい自寮に戻るなり、おざなりに宅配で送った着替えなどとは別に、大切に大切に手で持ってきたスーツケースを友人達の前に下ろした。

おおっ!!
と、身を乗り出すオタクモブ仲間の二人。

その二人が注目する中、モブースは恭しくスーツケースを開け、その中にぎっちり詰まっている小箱を一つ取り出すと、その中にまたきっちり詰まっている小瓶を一つ取り出した。

ごくり…と息を飲むモブ友達。
彼らが見守る前で小瓶の蓋を開けるモブース。

…おぉぉ……

ガラス瓶の蓋を開けると漂う少し特徴的な…しかしフローラルな芳しい香り…。
3人同時に漏れるため息。

──すげえ…まさにアリアの香り…
──よく再現したな…
──花の品種改良から始めたから7年かかったよ。
──すげえ…オタの…いや、アリアファンの鑑だなっ

モブースが手にした小瓶の中身は彼らの幼稚園児くらいからの最推しであるエルサイアオデッセイのヒロイン、巫女姫アリアをイメージした香水である。

作中でしばしばアリアから芳しい香りが漂ってくる描写があるが、画像なので当然ながら言葉で紡がれるだけで実際にその香りを体験することは出来ない。

だがモブースの実家は無駄に裕福で、目立つこと以外は息子のこだわりを叶えてやろうと言う甘い父親の元、一流の香水職人達を雇って、言葉の羅列から推測される香りを研究させた。

実在しない物を創り出す…その作業は当然困難を極める。
最終的には限りなくイメージに近い香りを創り出すため、なんと素材にする花の品種改良まで始めてしまった。

そうして改良に改良を重ねて納得がいくものが出来上がるまでなんと7年。
当時小学生だったモブースはもう高校生になっている。

本当に時間がかかった。
だが、それは幸いだったのかもしれない。

何故ならこの香水を完成させる最後の…そして一番困難なはずの要素と彼が巡り合えたためである。

そう…香りはそれ単体では意味がない。
アリアがつけてこそ、アリアの香水なのである。

シャマシューク学園1学年銀狼寮。
彼らが所属する自寮の御旗である副寮長プリンセス、アーサー・カークランド。

彼にこれを献上し、この香りをまとってもらおうと、モブースは小瓶の中でも特別に綺麗な細工を施したものの入っている、これも特別に美しい細工を施した銀の小箱を小テーブルに置いた。
そして自寮の全てのものの責任者である我らが寮長、ギルベルト・バイルシュミットにアポを取るべく自身のスマホを手に取ったのであった。











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