人魚島殺人事件_06_会長様の複雑な心境

こうして禰豆子発の戦いに参戦することになった錆兎と義勇。

そのために宇髄が初日用に用意したのは淡い青色の地に白い花模様が入った付け下げだった。

もちろんそれだけではなくとても品良く美しいワンピースも多数用意されていたが、
──初っ端はガツン!とかました方が良いからこれなっ!
と言う理由だけでわざわざ反物から選んで取り寄せて大急ぎで仕上げさせたらしい。

一応ウィッグも髪飾り各種も用意されていて、洋服用のものとは別にこの着物を着用時だけのために月下美人を模した見事な細工の白銀のかんざしまである。

そうして何故か着付けまで出来る宇髄の着付けでそれを身につけた義勇の美しい事と言ったら、もう天女のようだと錆兎は思った。

そう、このように恋人様が美しいと言うことは良い事である。
しかしながら…そこでややモヤモヤっとしたものを抱えてしまうのは、複雑な男心と言うやつだ。

それでもそれを表に出さないように努力はしている。
だがどうしても笑みの形を作った口元がひきつる。

そして…他の事には本当に気づかないのに愛ゆえか錆兎の機嫌の悪さにだけは気づいてしまう困った恋人様。

──…さびと…やっぱり俺なんかじゃ似合わない…?
とどこか不安げにゆれる大きな青い瞳。

これまで色々と大変な思いをし続けてきた分絶対に幸せにしてやると心に固く誓った可愛い義勇にそんな顔をさせることは万死に値する。
男としてのプライドとそんな恋人への思いとを天秤にかけてみれば、当然恋人の幸せの方に大きく傾くのは当然のことだ。

そして錆兎は片手を額に当てて、はぁ…とため息をつく。

──いや…すごく似合っているし世界で一番綺麗だと思う。
と、とりあえず似合わないか?という義勇の言葉をまず否定。
当然それならどうして?と言葉より雄弁に語ってくる視線から目をそらしつつ、錆兎は仕方なしに暴露した。

──単なる心の狭い男の嫉妬心だから気にするな。

そう言うと義勇は
──嫉妬っ?!錆兎がっ?!なんでっ?!!
と大きな目を零れ落ちるのではないかと思うくらいに見開いて驚いて見せる。

まあ自分でも情けないとは思った。
思ったが、義勇に不安感を与えるよりは自分が情けない男と思われた方がいい。
なので言う。

──お前が今似合いの着物を着て綺麗にしているのが炭治郎のためだから…

そう、それである。
正確には禰豆子の案件ではあるが兄である炭治郎つながりの関係で義勇がオシャレをしていると思うと、狭量すぎだとは思うがモヤモヤするのだ。

──…え?炭治郎…の?
とその錆兎の言葉に義勇はまたぽかんと小首をかしげる。

──違う。俺はどちらかと言うと錆兎のために着ているんだけど…
──…え??

義勇の言葉に対して今度は錆兎が驚く番だ。
何故自分のため?ときょとんとする錆兎に、義勇は、だって…と口を尖らせた。

「男女のモデルで錆兎が男のモデルをやるということは、俺が相手に選ばれなければ他の女が錆兎と一緒にモデルをやることになるし……それはすごく嫌だ…。
だから出来れば選ばれるのに不利なものは極力排除したい」
と、予想外の義勇の言葉にさらに驚く錆兎だが、その機嫌は一気に上昇する。
自分でも単純で馬鹿だなと思いつつも、自分のために着飾っているのだと言われると素直に嬉しい。

こうして会長様が機嫌を直したところで、波乱含みの撮影会が夏休みの宇髄の別荘にて開催と相成ったのである。








2 件のコメント :

  1. 多分、誤変換報告です。「予想外の言葉の言葉」→「予想外の義勇の言葉」かな…と。ご確認ください(*- -)(*_ _)ペコリ

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    1. ご報告ありがとうございます。
      我ながら何故そんなミスをしたやら😅💦💦
      修正しました。

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