影は常にお前と共に_11

その夜は義勇が不安がるので昔のようにくっついて布団に横たわりながら、ひたすら話をした。

翌日には首と胴が泣き別れなんて事態になるかもしれないのに、義勇はこの上なく幸せそうで、そんな義勇を見ていると錆兎も色々がどうでも良くなってきてしまう。

正直、鱗滝の元にいた時から義勇よりも自分のほうがたいていのことは器用にこなしていたと思うし、義勇が強くなって【水柱】にまで上り詰めた今でも、ひそかに自分のほうが色々出来るし力でも辛勝にはなるかもしれないが負けないと思っているわけなのだが、それでも義勇は錆兎にとって絶対的強者だと錆兎は思うのだ。

自分がどれだけしたいことでも義勇が本気で嫌がることはできないし、義勇が本気で望む願いは自分が多少気が進まなくても叶えてやりたいと思ってしまう。

自分の心の奥深く、一番柔らかくデリケートな部分に鎮座している誰よりも大切な存在なのだ。

錆兎は色々器用なので、よしんば手の一本、足の一本失くそうがなんとか生きていくだろうが、その部分を失くしたら、他すべてに傷一つなかったとしても、生きていく意義を失ってあっという間に死んでしまうだろう。

その代わりにそこが満たされていれば、どんなに過酷な環境だとしても、心も身体もぽかぽか温かく感じる。

南蛮の結婚式では──死が2人を分かつまで──互いに対する愛情を誓い合うらしいが、自分と義勇の間は死にですら分かつなんてことさせやしない…

心からそう思うのだ。


ああ、でも出来ればもう少し一緒に現世を堪能したい。
何もない山で過ごす日々も楽しかったが、今は今で色々と手に入る町中である。

一緒に買い物に行ったり、うまいもんを食いにも行きたい。
できれば揃いで何かを買って身につけてみたい。

久々に手合わせもしたいし、まあ、あれだ…そろそろ21にもなったことだし、致すことも致してみたい。

いや、でも義勇の方はまだそこまでの気持ちがないなら、まだ待てる、まだ待てる……はず…

少なくとも今当たり前に危機感なくぴったりとくっついて邪気のない笑みを浮かべている義勇は、そんなことを意識はしていなさそうなので、どうせまだまだ手なんか出せやしないのだろうが…でも命を取られるということでなければ、いつか本懐を遂げられる日もくるんじゃないかと思ってはいる。


はあ…死にたくないなぁ……というより、義勇と一緒に生きることを堪能したい。

目の前で幸せそうに、いつになく饒舌にしゃべりかけてくる義勇が可愛すぎて、錆兎の夜はため息とともに明けていった。









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