リトルキャッスル殺人事件sbg_14_幽霊は桜の海で釣れるのか?2

それぞれ食後、自室に戻って支度をすると玄関に集合。そのまま跳ね橋を通って外に出る。

錆兎と義勇とぴったりくっついて歩く女4人。

空手部3人はそれを面白くなさそうにたまにチラ見をしながらも、錆兎には3人がかりでも勝てないのは昨日実証済みなので、しかたなしにちゃっちゃと歩を進める。


「ああ、そこが倉庫だな。ちょっとすまない」

海へと続く水路にかかる細い橋の手前にある、昨日拓郎が行っていた釣り具、浮き輪、その他がある倉庫をにかけよると、錆兎は内ポケットから薄いビニール製の手袋を取り出して付けた。

「会長様すご~い!!刑事みたいっ!!」
と、それを見てはしゃぐ女子高生組。

空手部達は
「わざとらしくそんなもん持ってるって、馬鹿じゃねっ」
と、ケッと言わんばかりに嫌な笑みを浮かべる。

そのどちらに対しても良くも悪くも感情的になることなく、
「ここのところ旅行とかでロクな事がなかったから、トラブルが起こった時用に念のため持参した。
これまでと違って元々トラブル起こる前提の旅行って感じの話だったしな」
と、返答を返し、錆兎はそのまま倉庫のドアを開け、中身を確認した。


浮き輪が3本、パラソルが1本、大量の釣り竿と…魚篭もある。
まあ昨日拓郎が言ってた通りな感じで特に怪しい物はない…いや、怪しくない物もない?

「朝倉さん、確認したいんだが…」
錆兎は後ろに立つ真由を振り返った。

「なんです?」
真由は言って一歩前に出る。

「いや…対した事ないと言えばないんだが…昨日拓郎さんの話だとゴムボートもあるって言ってた記憶が…。今ここにないんだが、別の場所にうつしたとか?」

「え?そんなはずないんだけど…」
錆兎の言葉に真由も倉庫を覗き込んで

「あら、ない。あとで伯父さんに聞いておきます」
と、首を傾げた。

「他に…無くなってる物は?」
さらに聞く錆兎の言葉には

「ん~、ないと思います」
と真由は首を横に振った。


「マジ探偵ごっこかよっ、ちゃっちゃと行こうぜ!」
少し離れてそれを眺めていた空手部3人組は馬鹿にした様に鼻をならすと、先に歩き始める。

「なによ~。元々我妻と義勇君が見た怪しい物探すって主旨なんだから色々調べるのは当たり前でしょ~!」
女性陣がそれに向かって舌を出して言うのに苦笑すると、
「すまない、行こう」
と、錆兎は倉庫を閉めて、みんなを先にうながした。


その後、水路にかかっている橋を渡り、さらに宿の裏側を目指してすすむと、サラサラと雪の様に桜吹雪がふってくる。

「うあ~綺麗ね~。お昼はお弁当もって裏でお花見でもいいかも♪」
女子ははしゃぐ。

可愛いミニチュアの城に満開の花吹雪…。
錆兎がチラリと横を見ると義勇も桜の木の方に目をやっている。

しかしそれは錆兎が想像したような花びらが舞う上の方ではなく、木の根元。
錆兎も義勇の視線の先を追ってみると、そこには漁網のようなものが…


「義勇、見るなっ!!」

瞬時に判断した錆兎が義勇の視界からそれを隠すように義勇の顔を自分の肩口に押し付けると、
「大丈夫。お前だけは何があっても守るから安心しろ。
少しだけ状況を見てくるから、大人しくあっちに避難していてくれ」
と、その額に軽く口づけた後、女子高生組の方に義勇を避難させた。


「うあああ~~~!!!!」
先を行っていた空手部3名が慌てふためきながら逃げ惑っている。
その様子に女3人はお互い寄り添って不安げに抱き合った。


「…えっと…義勇君て…錆兎君にとって……」
咄嗟にとった錆兎のその行動と言葉に、一人他の女の子達と距離を取った真由が首をかしげる。

その少し不思議そうな…でも何か察したような、物問いたげな視線に気づいた錆兎は、真由と視線を合わせた。

「ああ、義勇は見た通り結構恥ずかしがり屋だから言わなかったんだが…俺にとって唯一守るべき相手、恋人だ。
去年の夏に会った瞬間俺の方が一目ぼれして、とにかく尽くして尽くしてやっと付き合うに至ったわけなんだ」

くしゃくしゃと頭を掻きながら言う錆兎に、真由はどこか複雑そうな表情で、それでも
「そう…なんだ。意外」
と、さらりと流して錆兎とそのまま並んで視線を前方にむけた。
そして固まる。

「どうしたの?!」
とブルブル震える手で一際大きな桜の木を指差す男3人に声をかける由衣。

「桜の木が何か?…!!」
と、見に来ようとするのを錆兎は

「来るなっ!!女性陣と義勇は宿に戻って拓郎さんに伝えてくれ!
木村が死んでる。警察に連絡!!」
と、他はありえない展開に確認に来ようとするが、そこはさすがに何度も事件に巻き込まれた義勇は即状況を理解して、
「見ないほうがいいっ!行こうっ!!」
と、それをとめた。

その対応に安堵して錆兎は前方に足を進める。
薄桃色の花びらが降り注ぐ中…魚と共に漁網に包まれ白目を剥いた男の遺体。木村だ。


「剛っ?!!」
走りよりかける真由の腕を近くにいた義勇があわててつかむと、他3人の女性陣も一斉に止める。


「錆兎、女の子達も連れて戻るからっ!!」
と、真由を押さえつつ義勇が残りの女の子3人を宿の方へと誘導する。

「ああ、義勇、頼む!」
と、錆兎が答えると、
「放してぇ~!!!」
叫ぶ真由を2人はそのままひきずるように連れて行った。


Before <<<    >>> Next (10月12日0時公開予定)





0 件のコメント :

コメントを投稿