そして食事。
また絡んでくるかと思いきや、今度は木村と田端が何故か険悪状態らしい。
お互い顔を合わせようともせず、柿本と湯沢が顔を見合わせている。
善逸がコソコソっと真由に聞くと、真由はちょっと悲しげにうつむいた。
「えと…ね、ちょっと色々誤解があって…剛、私が田端と浮気したんじゃないかって…」
「あちゃ~」
善逸は由衣と顔を見合わせる。
「まあ…男二人で揉めてる分には良いけど、真由に矛先向くようなら俺らんとこ逃げて来なね?
炭治郎も実は空手やってるし、隣の部屋には錆兎がいるから。
どうとでもかくまってもらえるからね?」
少し心配そうに言う善逸に、真由は微笑んだ。
「うん、大丈夫だよ。でもありがと我妻」
「ホント…遠慮しないでいいからね?」
「うん」
ああ、本当にこんなロクでもない男とはこれをきっかけに別れればいいのに…と善逸は思う。
「由衣達も!あっちの男連中多分気がたってるから、ホント一人にならないでね」
それと同時に善逸は他の3人にも声をかけ、炭治郎も
「危険を感じたらドア叩いてくれたらいつでも起きるから遠慮しないで起こしてくれ」
と、殺気立つ男性陣にチラリと目を向けて女性陣全員の顔を見回した。
そして食後…
当たり前に食べっぱなしで各部屋に戻る空手部4人を完全に放置で、今度はほぼ準備を一手に引き受けた錆兎と義勇、そして真由以外の女3人組、善逸、炭治郎で皿洗いを引き受ける。
真由はずっと下で色々働いてたためできなかった自分の荷解きをしに先に部屋へと帰っていった。
そして錆兎はそのまま食堂でお茶を飲みながら義勇と話をしている。
「…義勇、さっき真由と何を話してた?」
男連中と彼女が二階にあがっていき他がキッチンで洗い物をしていてこの場に2人きりなのを視認して、錆兎はそれでもやや小声で義勇に聞く。
食事の準備中、真由と2人で並んで話をしている義勇に、錆兎は気が気ではなかった。
善逸も女性陣も誰も警戒はしていないようだが、今回の不穏さ満載の旅行は元々彼女が発端となっていて、彼女は警戒すべき男連中の1人の恋人である。
それでなくても過去に誘拐されたこともある義勇のことだ。
またそんなこともあるかもしれない。
そして…その時にもこれまでのように無事とは限らない。
むしろ誘拐されていて怪我一つ負わされなかったというのは、とてつもなく幸運だったのだ。
「ん~?ああ、錆兎の包丁さばきがすごいねとか、そんな話をされただけ」
「他には?なんか変な事とか言われなかったか?」
「いや、別に?
というか俺と話したいというより、錆兎の話がしたいんだと思う。
錆兎みたいに何でも出来る友人がいて良いねとか言われたから」
そんな義勇の言葉に、錆兎は盛大にため息をつきたくなった。
そもそもが、義勇が埠頭で合流した時に彼女が自分達を意味ありげに見ていたと話していたのだが、それを義勇は彼女は錆兎をみていたのだと思っている。
が、忘れてないか?
そこに居たのは3人だ。
そう、3人。
自分と炭治郎と…そして義勇自身だ。
義勇はキッチンでのことだって彼女が錆兎についての話をしたいと思っているようだが、錆兎に言わせればそんなの義勇と話すための口実だと思う。
真由は絶対に義勇と話すためにたまたま話題に乗せやすい自分の名を口にしただけだろう。
頼むから危機感を持ってくれ!!
…と、声を大にして叫びたい。
まあ、持って生まれた性格なんてそうそう変わるものではなし。
そもそもがそういうところも可愛くて好きだということもあり、義勇が警戒することが出来ないなら、自分が気をつけるしかない。
何があっても義勇から離れずに側で全てに関して警戒しよう。
錆兎はそう心に固く誓って、紙コップに入った苦いコーヒーを飲み干した。
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