kmt リトルキャッスルsbg

リトルキャッスル殺人事件sbg_9_嵐の前2

「これ千切りお願い」

と差し出されたキャベツをぶつ切りにする利香。

由衣はジャガイモの皮というよりジャガイモを剥いている。

「伯父さんが獲って来たんだけど…魚おろせないよね？」

もう否定形で聞く真由に、もちろん！と、うなづく真希。

「手伝って…いいか？すごく心臓に悪い。頼むから包丁はまかせてくれ…」

手伝っていいやらいけないやらわからず少し離れてそのすさまじい情景を見ていた錆兎が、自分もエプロンをつけて真由をのぞく今にも手を切りそうな女性陣全員から包丁を取り上げた。

そして…本当に千に刻まれて行くキャベツ。

クルクルとあっという間に皮が剥けていくジャガイモ。

そして…綺麗な薄造りにされる魚。

「おお～～！！！」

と歓声をあげる女性陣。

「すっごいね～。会長様って料理もできるんだ？」

という声に

「実質一人の暮らしが長かったから…」

と淡々と食材を切り刻んで行く錆兎。

「ええ？！なに？！頭良いと料理もできんのっ？！」

と、善逸も驚きの声をあげるが、

「母親が早くに亡くなって父と二人の生活だったからな。

包丁なら3歳くらいから握ってるぞ」

と、錆兎はこれにも淡々と答えた。

「魚は竿で？」

と、手を動かしながら隣でやはりせっせと調理をしている真由に錆兎が聞くと、真由はちょっと微笑んで首を振る。

「いえ、網で。今朝獲ってきたとれたて」

「どうりで…。新鮮だと思った」

そんな二人を所在なげに見ている一同から一歩踏み出して、

「何…してんの？義勇…」

と、善逸が呆れた声を出した。

「何って…飾り付け？」

造りにした魚でバラの花のような形を作りながら言う義勇。

「料理は目と舌で味わうものだって姉さんが言ってたから…」

と、実に美しく盛り付けていく義勇はその可憐な容姿もあいまって同年齢のＤＫには見えない。

そういえば以前、ウィッグをつけて化粧をしてスカートを履いた姿で錆兎と一緒に出掛けていた義勇を街で見かけた時、善逸はそれが義勇だと気づかずに錆兎の彼女だと思い込んだこともあったくらいである。

お嬢様学校の中でも可憐で、皆学園祭のヒロイン役に抜擢されるという冨岡家の女性達の容姿を受け継いでいる義勇は肌も真っ白、目は大きく澄んだ綺麗な青で、それを縁どるまつげは長く、鼻も口の小さく整っていて、そこいらの女子高生など太刀打ちできないくらいに綺麗な顔立ちをしているので、こうして楽し気に飾り付けをしていると、深窓のお嬢様学校のお嬢様女子高生と言われても納得できてしまう。

そしてそこにひょこっと顔だけ覗かせた空手部の一人の湯沢が、

「お姫さんて賢い学校の賢いＪＫなんだろ？

お前ら馬鹿なんだからせめて料理くらいお姫さん並みにできるようになっておかねえとやばくね？」

と言って女性陣にジャガイモを投げられて逃げていく。

そんな女性陣達から少し離れて、シンクとコンロのあたりで並んで料理をしている錆兎と真由。

「鱗滝さん…ホント見事ですね。

伯父もこの仕事長いからかなり料理やるんですけど、それに勝るとも劣らない包丁さばきだと思う。

勉強もできて武道もできて料理もって…ホントすごい」

真由が鍋をかき回しながら目を丸くする。

それに対しても錆兎は

「どれもひとより早くから長い時間やってるだけだから」

と、また淡々と答えた。

結局真由と錆兎二人だけでてきぱきと調理作業を終え、それを指示通りにテーブルに運ぶ一同。

「なんかちょっとした旅館の食事みたいよね♪」

とウキウキという女性陣。

料理を運び終わったタイミングでいきなり玄関の方でギギ～っという大きな音がなった。

「な、何？！」

思わず炭治郎に抱きつく善逸。

「あ～、あれね、跳ね橋が上がる音」

善逸の慌てぶりがおかしかったのか、真由がクスクス笑いをもらした。

「うあ…すごい音するんだな」

炭治郎も感心したように玄関の方向をみやる。

「うんっ。まあだからあんまり遅い時間だとなんだし、伯父さん毎日夕方6時から1時間外見回って夜の7時に跳ね橋あげて、朝の9時に下げるの」

まだお腹を抱えて笑い転げながら、真由は笑いすぎて出た涙を拭いた。

そんななか、

「ただいま～」

と玄関の方から拓郎の声がする。

真由はそれに笑みを浮かべると、

「おかえり～ご飯できてるよ～」

とパタパタと拓郎の出迎えに走って行った。

Before <<<    >>> Next （10月7日0時公開予定)