こうして全てを終えた後、いまさらのように救援が来た。
「遅えよっ!」
と班から離れてそちらに駈け寄った宇髄が文句を言うと、救援に来た風柱は
「お館様が下弦できつねっこの力を図ろうっていうから近くで待機してたんだよ。
まあ、きつねっこに倒せなくてもいざとなったら天元がいたからねっ」
と、にこにこと食えない笑顔で暴露する。
あ~、そういうことだったのかよっ!!
と、もう自分で決めたと思っていた宇髄の行動もすべてお館様の計画に入っていたのかと思うと、ため息しか出ない。
そして…おそらく前回の柱合会議の時に、自分以外の柱はみなそれを知っていたのかと思うと、微妙に腹は立つ。
…が、お館様のご意志となれば文句も言えないので、風柱にけりを入れておく。
ついでに言うなら…自分もなまじそれをするつもり満々だったにも関わらず、他が津雲以下津雲班を見捨てることも厭わないつもりだったと知ると、もやもやとした。
そう、この人当たりはいいくせにひどく割り切る男だから余計にそう思うのかもしれない。
「俺…お前のこと嫌いだわ」
と、思わず零すと、男は相変わらずニコニコと
「良かったねぇ。俺はこれが最後のご奉公だからさ」
と謎の言葉を吐いた。
「あぁ?」
と意味をとりかねて視線を向けると、男はやっぱり笑顔のまま
「俺さ、たぶん今柱の中で最強だと思うから、このまま勝ち逃げさせてもらおうと思って、辞表だしたんだわ。
それが受理されて、明日からは風柱じゃなく元風柱の一般人として、稼いだお金で華やかに楽しく生きていく予定だからっ。
天元ちゃんはまだまだ先長いしね~、がんばれ~!」
とひらひらと手を振る。
のちにいろいろ事情を知ってみれば、確かに柱の中でも群を抜いて強かったこの時の風柱は、なぜ強かったのかと言うと強さと引き換えに寿命が限られる痣が出ていたせいで、おそらく命が尽きるであろう25まであと1年を切った時点で、柱のまま死ねば他が動揺するだろうという気遣いで鬼殺隊を離れることにしたのだとわかる。
だが、この当時の宇髄はそんなことを知る由もなく、ただ相手の言うことを鵜吞みにするほど単純な性格でもなかったので、何か事情はあるのだろうとは思っていた。
鬼殺隊としても長く隊に尽くしてくれてきた甲の隊士を見捨てなければならないというのは本意ではない。
だが、誰かが総指揮はとらねばならないし、それを癸の新米隊士に任せても他が納得せずに回らないだろうから…と、今回の人選になったのだろう。
ということで、犠牲になるという結果が分かっていた作戦を最後に締めるという嫌な役を、男は最後のご奉公にと買ってでたに違いない。
──津雲を見捨てる気だったのは錆兎には言うなよ?
別に津雲に関しては自分が勝手についてきたのだろうと宇髄は思う。
だから気になるのはそこだけだ。
まだ汚い大人の事情なんて知らずに純粋に任務にあたっている子どもに、そんなことを知らせて挫折させたくはない。
そんな気持ちで精いっぱい睨みつけながら言う宇髄に、
「別に見捨てるつもりとかじゃなかったけどね。
津雲が自分の能力の大小を見極められずに暴走しただけじゃない?
でも…そう思えてしまうなら、きつねっこはお前が上手に守り育ててやんな。
あの子はたぶん、俺やお前と違って裏方じゃなくて、鬼殺隊の御旗になる子だから」
と、男はからかうような笑みを消して、どこか穏やかな声音でそう言った。
こうして翌日本当に風柱が辞して一本の柱が欠けた数日後、この時の任務で倒したのが下弦とはいえ十二鬼月だったため、なんと入隊から1ヶ月という前代未聞の速さで、齢13歳の柱が誕生した。
水柱、渡辺錆兎。
のちに鬼殺隊の御旗と呼ばれるようになる少年である。
── 第三章完 ──
あれ?今回主役宇髄さんかな…(;´Д`)というくらい活躍している....❣
返信削除因みに誤変換報告です。「翻意ではない」→本意ではない かと…ご確認ください。
最後の最後まで誤変換(ノ∀`)
削除ご報告ありがとうございます。修正しました💦💦
今回は主に宇随さん視点で見たきつねっこな話ですね。
次回はたぶんさねみんあたりから見た~(ryになりそうな予感です😃
爽やかに去っていく風柱。まだ若い宇髄さん。色んな人たちの思いが渦巻きながら、新たな章に突入ですね。宇髄兄さん、錆兎たちをよろしくお願いします!
返信削除最終的に年上が宇髄さんと悲鳴嶼さんだけなので、二人が柱になる頃がちょうど新旧入れ替わりなのかなと勝手に思っています。
削除そういう意味では数少ない頼れる先輩ですね、宇髄さんは😁