──今度の津雲が仕切る任務にね、狭霧山のきつねっこ達が参戦するんだよ。
宇髄にとっては柱になって二度目となる柱合会議でのこと。
お館様こと産屋敷耀哉様がどこか楽し気にそうのたまわった。
前に立つ少年は若かりし頃の左近次にも負けず劣らぬ優れた剣士と評判で、その左右に控える少女達もそんじょそこらの隊士には負けぬほどの腕前だということだ。
しかも、仮面の下に隠した素顔は皆一様に目を引くほどに美しい。
そんな彼らの武勇伝は、彼らが隊士になるための最終選別からすでに始まっていて、通常なら逃げて逃げてなんとか生き延びて合格となるところを、鬼を斬り、他の参加者を助けて仕切り、なんと前代未聞、1人の脱落者も出さずに全員無事突破という快挙を成し遂げたのだ。
これで話題にならないほうがおかしい。
先代の水柱は左近次からその座を引き継いでわずか5年ほどで運悪く上弦の鬼に遭遇して討ち死にしたため、その座が空いて早2年。
次の水の柱の座につくのは確実だろうと噂されていた。
宇髄自身、隊士になって2年目、齢15でその任を拝命したばかりの若い柱なので、自身と同年齢で隊士になったきつねっこの少年には大いに興味をひかれるところである。
お館様の言う津雲が仕切る任務というのは参加する人数もそれなりに多い大規模なもので、その大勢の中に例のきつねっこ達が混じっているとのことだ。
一応元柱の愛弟子たちのこととは言え、柱が現状報告や方針を話す柱合会議でお館様が何故わざわざその話題を口にしたのか…皆、不思議そうな顔をしている。
最古参で、それこそ話に出ている元水柱の鱗滝左近次とも交友の深かった鳴柱の桑島慈悟郎などは、
「何故いきなり奴の弟子の話を?
左近次のやつ、お館様に何か申しましたかな?」
と、育て手を始めてずっと最終選別で弟子達を失い続けて、これでもう弟子を取るのは最後にすると宣言をしていた7年目、ようやく初めて選別を超えて鬼殺隊士になった弟子達可愛さに何か依頼したのかと思ったらしい。
あいつは甘いから…と独り言を言いつつ聞くが、お館様はただにっこりと、
「ううん。そうじゃないよ。
ただの世間話だよ。
あの子達の1人は、おそらくそう遠くない未来に皆の同僚としてここに並ぶだろうなって思ったから」
と、言う。
そしてそう言いつつ、世間話ではあるものの、無作為に選んだ話題ではないようで、
「天元は年齢が近いから気になっていたみたいだしね」
と、付け加えた。
ああ、見抜かれている。
まあ、お館様はお屋敷にいても皆の事をなんでも把握しているようなところがあるから今更だが…。
これは単に宇髄の好奇心を満たすため…ではなく、直接見に行きたいと思っている彼に暗に許可を与えているのだろうと、宇髄は受け取った。
特に緊急性のあるような強い鬼が出ない限り、津雲の作戦で館に突撃する予定の日は宇髄は非番だ。
だから、休みだしちょいと覗いて来ようか…と、宇髄はこっそりとそう思った。
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