学園警察S&G_18_考察

学園警察のスタッフのほとんどがそうであるように、錆兎の朝は早い。

たいてい4時半に起きて筋トレからランニング。
それから勉強。
様々な学校で様々な出来事に対処するには、鍛錬と学力の維持は欠かせない。

そうして必要最低限のルーチンをこなして余った時間に、その時に抱えている案件について情報をまとめて、すべき行動を考えるのが常だ。

今朝は昨日色々と細かな情報が入ったので、それをまとめつつ考える。


被害者は直前の定期考査で1位だった木村。
加害者とされているのは同じく3位だった田中。

殺人の直接の原因とされているは木村が田中に対して成績に関して暴言を吐いたこと。
だが、これは違うだろう…と、錆兎は思う。

殺害手段は毒殺なのだ。
その場で投げつけられた暴言が原因の衝動的な殺人だとすれば、もっと直接的な暴力に訴えるだろう。
毒殺はおかしい。

では不死川の言うように、衝動的なものではなく、元々殺意を持っていて毒を持ち歩いていた可能性は?

いや、それも可能性は非常に低い。

宇髄の話だと、前回は木村が1位だったが、前々回は順位が逆だったのだ。

とすると、次回は順位がひっくり返っている可能性も多々あるし、なんなら、2位の不死川に首席を持っていかれる可能性すらあるのだから、一度の試験の結果でいつか殺そうと毒薬を持ち歩いていたというのは無理がある。

不死川の言葉に寄ると、件の事件が起きた時は教師に言われて酌に近づいたが、普段は互いに接触がなかったらしいので、1位を争っている中で不死川には持っていない殺意を木村にだけ普段から持っている理由がない。

それに衝動的なものではなく計画的なものだったとすれば、自分に疑いが向くようなやり方は避けるだろう。

馬鹿でもない。
むしろ優等生で失うものが多い学生だ。
錆兎が時に相手にしてきた不良達とは違うのだ。


誰が…どうして…どうやって?

発想を変えてみよう。
もし田中が犯人じゃないとしたら、犯人たりえたのは誰か?
そしてその人物が犯人だったとしたらと言う過程で、動機と方法を追っていったらどうだろうか…

手にした万年筆を指先でクルクルまわしながら考え込む錆兎。

大どんでん返しで実は被害者の自殺とかでなければ、登場人物はあと1人しかいない。
動機は…その人物が犯人だとすると、ふわっとだが予測はつく。
あとは方法だ。

その人物が犯人だとすると、毒を混入できたのは何にどのタイミングで…だ?
木村が紙コップを手にしてからは、物理的に毒を混入できたのはコップを持っていた木村自身と、飲み物をいれた田中だけだ。

じゃあ、その前は?
紙コップもジュースも密封されていたものを開封したから無理だ。

氷は?
でもピッチャーに入った氷は殺害後に警察が調べて毒が混入していなかったことは立証されている。

菓子の類は口にしていなかったと言うし、毒は確かに口から吸収されている。
あと、口にする可能性のあるものは?

まだ何かを見落としているのか…?




──…さびと…おはよ……

進展しない考察に錆兎が頭を悩ませていると、どうやら義勇が目を覚ましたらしい。
寝落ちの舌足らずな声でそう言って、目をこすりこすりしながらむくりと起き上がってくる。

…と、同時に何も見ていなかったのだろう。
昨日の夜にホットミルクを飲ませてやってベッドわきに置いておいたまま片付け忘れていたマグカップが義勇の手に当たって床に落ちる。

…あ……
と、錆兎と義勇、双方の口から声が漏れた。

目を見開いてカップを凝視する錆兎に、寝ぼけ眼だった義勇は完全に目が覚めたらしく、
「ご、ごめんっ!片付ける」
と、転がるカップに手を伸ばす。


しかし錆兎の口から出てきたのは、

「そうかっ!それだっ!!
でかした、義勇っ!お手柄だっ!!」
で、義勇はわけがわからずに、目をぱちくりさせた。

「あとは証拠集めだけだな。
悪いが今日の放課後、不死川に俺達の部屋に来てもらえるよう、頼んでおいてくれ」

と、どこか機嫌よく言いながらカップを片付ける錆兎に、義勇はやっぱりわけがわからないまま、でも錆兎のいう事は常に正しいのだから、と、了承して、顔を洗いに洗面所へと向かった。

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