寮生はプリンセスがお好き9章_8_策略

──さあて、そろそろ先輩方が迎撃に来るから、花嫁部隊は俺様の後ろなっ!

ギルベルトがそう指示すると、ギルベルトの背後に1人寮生が付き、そのあとに花嫁と5人のメイド、そしてそれを囲むように寮生達という陣営が出来る。

寮生は数人の銀狼寮の寮生以外は全て金狼寮の寮生だ。
残りの銀狼寮の寮生は、ルートを含む全員、銀狼寮の陣地を守っている。

一応同盟関係の金狼寮ではあるが、それを現在ギルベルトが率いている理由がそこにアルフレッドに対する暗殺を命じられた人間が紛れ込んでいるからということなので、完全には信用できない。

まあ、ギルベルトに害を与えたところでそれでそいつが用心されることになるだけなので、今回に関しては暗殺者も香にしてやられたとほぞを噛んでいるだけだろうが…。

それでも万が一不測の事態が起こった時に陣地に連絡をとれるよう、ギルベルトは3人だけ銀狼寮の寮生も連れて来ていた。


ということで、元々が金狼寮の寮長と銀竜の副寮長が夜中に自分の所に忍び込んでくるなどと、本当に色々秘密裏に始まり秘密裏に勧めた同盟で、それこそ金狼寮の寮生など、今日その事実を知ったくらいなので、敵はこの同盟に気づいてはいなかったはずである。

…さあて、今頃カインも慌ててるかな
と、金色の手袋の金狼寮生を率いる自分を遠目に確認して慌てて戻って行った金虎寮の斥候を目視して、内心にやりと笑うギルベルト。

事前にフェリシアーノが存在感の薄さという銀竜寮の最大の能力を駆使して情報を集めてくれた。
それによると、3年虎寮組は自分を2対1で食い止め、残る金竜は同盟の条件としては3人のプリンセスがそれぞれ残る3寮の陣地の防衛という約束なのだそうだ。
が、秘かに裏切ってまずは虎2寮の陣地を落として二人のプリンセスのブレスをゲットしたあとに、そのまま虎2寮が寮長である自分を食い止めている銀狼を襲撃、その後に銀竜を倒し、それで自分の分と4寮分のプリンセスの分、そして銀竜の寮長分で、過半数の6つのブレスレットを入手ということで、あとは逃げ回って優勝を勝ち取るという算段らしい。

普通なら同盟条件をガン無視での裏切りなど、遺恨を残しすぎて後々まずいことになりそうだが、そこは相手が2寮とも3年生寮ということで、次年度は卒業していないしOKと考えているようだ。

しかし、これは…とギルベルトは苦笑するしかない。
自寮のプリンセスが一番なので、それよりも優先すべきことなど、他寮への誠意を含めて、ない、とギルベルト自身も思っている。

だが、今回の裏切りは下策だ。
確かに虎寮の寮長を含めた高3達は卒業していくが、中等部生は残る。

プリンセスはとにかくとして、カイザーはたいていが内部生なので、次年度の寮長は今年の中等部3年生だ。
下級生だからと舐めて遺恨を残していると色々が終わる。

さらに言うなら、今年の高1,高2年の寮長達もその信頼できない様をみているので、来年度のプリンセス戦争でどこかと同盟を組もうと思っても、組んでくれる寮がなくなって孤立すること請け合いだ。

まあ…おかげでこちらもやりやすい。
虎寮組と戦闘に入ったら即、金竜の裏切りを教えてやるだけで色々動揺が走って戦いに集中できなくなるだろう。

こちらは3寮が一枚岩で、主軸はギルベルトの率いる部隊だが、実は銀竜の寮生の一部を別動隊として率いるルーカスにバッシュをつけている。

もちろん自寮の陣地は残りの銀竜の他に、香とルッツが率いる銀狼寮兵がしっかり守っているし隙はないはずだ。

本来なら同盟を組んでいても共通の敵を倒したなら同盟を組んでいた寮との潰し合いになるため各寮ごとに陣地を固めないとならないので兵力が三等分されるところだが、絶対的に自分達銀狼寮を裏切れない理由のある2寮と組んでいるので、そのあたりはとても楽だ。


ともあれ、寮長二人を一人でなんとかしなければならないだけではなく、後ろの花嫁軍団を守らなければならないのは厳しいのは確かである。

常に鍛錬を怠らずにいるとはいえ、相手は高3で1番と2番に強い学生だ。

まあ…色々あって完璧である必要はないのだが…というか、完璧であってはいけない事情があるのだが、その匙加減がなかなか難しいぜ…と、ギルベルトは綺麗な形の銀色の眉をわずかにしかめて前方をにらみつける。

その視線の先には薄暗い中でも目立つ金色のマントが翻っていた。



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