*****
初日はメンバー紹介、翌日は現在の生活などを紹介したところで、今日は特定の人物にインタビューしてみようかな、なんて、リポーターっぽいことを考えてみたっ。
ということで、初日にギルマス様からカップルでカップル推しだから面白いでしょと紹介され、その後、本人といると結構ガチだな(笑)と納得のアキちゃんと、その彼氏シエル君に、彼らが推す我らが会長様とお姫様についてお聞きすることに。
サビト君の話なら僕に任せてくれたまえっ!!」
さっそくサビト君とギユウちゃんには席を外してもらってシエル君とアキちゃんに居間で話を切り出した瞬間、シエル君がキラキラした目でそう言うと、
「確かになっ。こいつ体育祭でマイク占領して『さすがサビト君!!』って叫び続けた人間だからなっ!」
と、テンゲン君が通りがかりに笑い、
「…全く恥ずかしいやつだ。
好意など絶叫するようなものでもなかろう…」
と、同じく通りがかりにため息をつくイグロ君に
「ことあるごとに学校中でミツリ君に対する愛を叫ぶ君にだけは言われたくない」
と、シエル君は言い返す。
そんな私達のやり取りの間
「長くなりそうですし、お茶いれてきますね」
と、お茶を煎れに行ってくれるアキちゃん。
本当によく気の付く気立ての良いお嬢さんと言った感じのその姿に、気の利かないことをユキ君から毎日のようにチクチクやられる28歳は感心しきってしまうわけなんだけど、それを口にすると、シエル君はフフンと得意げに
「自分大好きな僕が、その自分と一番近くにいる相手として選んだ女性だからね。
容姿だけではなく内面も併せたら彼女は好ましい存在の学園トップ3には入ると思ってるよ」
と、言い切っちゃう。
「…トップ3って、あとはギユウちゃんとか?」
「いや?あとはそうだな…カナエさんとか…」
と、少し首をひねって考え込むシエル君。
え?推しじゃないの?ギユウちゃん推しじゃないの?と聞いてみると、なんとあっさり
「あ~…ギユウ君の価値は僕的には容姿と…あとはサビト君が必要とする性質だと思ってるから…」
と、ギユウちゃん推しと言い切った彼女様が聞いたら激怒しそうなことをのたまわった。
目の前で驚きのあまり固まる私に、シエル君はニコニコと
「ああ、二次元なら容姿が良くて天然で…というのはポイント高いかもしれないけどね。
僕はそういうところに価値を見出さない人間なので」
と言う。
「え~っと…つまり、シエル君はサビト君単推しってことで?
むしろギユウちゃんが邪魔とかそういう……」
私の脳裏にはその時、某腐女子の友人の笑顔がクルクルと回ったわけだけど、そんな私にシエル君はきっぱり
「僕はゲイではないからね?
まあ…サビト君がどうしてもと言うなら努力はしてみるけど、好んでそうなりたいという願望はないな」
と、断言。
「まあ、そうだよねぇ…彼女いるし…
動画見たよ。
いきなり刃物持って向かってくる相手を前にして、とっさに彼女を後ろにかばうなんて、愛がないとできないよねぇ」
と、それに私は頷きながら、しかし
「…でも…望まれればデキるん?」
と、突っ込みをいれてみました。
そこはほら、モブ代表としては聞いておかないといけないところかなと思って。
するとシエル君は
「君、そういうの興味あるタイプかい?」
と、少し呆れ顔をしつつも、答えてくれた。
「大前提として…当たり前だけどサビト君に対する好きとアキ君に対する好きは違うからね?
極端な話、サビト君に関しては彼が僕の意に染まないことを依頼してきたとしてもなるべく前向きに検討するけど、アキ君の場合はそれが僕の意に染まないことであることを伝えるし」
「え?普通逆じゃないの?」
「逆じゃないよ?サビト君に対しては僕がサビト君を好きなことから関係が始まっていて、アキ君に対してはアキ君が僕を好きなところから関係が始まってるから」
え?これ聞いて良い話?
てか、シエル君、実はヤバいモラハラ野郎?
と、焦る私。
しかもその最悪なタイミングでアキちゃんがお茶を片手に戻ってきてしまって、すわ修羅場かっ?!と焦ったわけだけど、彼氏のそんな発言に彼女はクスクス笑っているじゃないですか。
そして
「ああ、そうよね。私達はそんな感じ」
などと言いつつ、全く動じることなく私とシエル君の前に湯呑みと羊羹を置いてくれる。
「シエル君はね、頭が良くて成績がサビト君に次いで学年2位で、スポーツも料理も家庭科も芸術もなにもかも一通り人並み以上にこなせて、容姿も良くて…でも自分やサビト君が好き過ぎてちょっと変わった人扱いされちゃう人なんです。
私は自分に自信がないからそういうところが好きで…彼は私の無条件で彼のことを好きな人間だというところが好きなんですよね。
彼曰く、彼は私が無条件で好きな彼で居続けるために努力をしてくれるそうですし、自分を好きな私を失くさないように、この前みたいなことがあれば全力で守ってくれるし、何より趣味が同じで一緒に楽しめるので、最高のパートナーですよ?」
と、最後にシエル君の隣に自分の分のお茶と羊羹を置いて座った。
それにうんうんと頷くシエル君。
言ってることは互いにえ?という感じなんだけど、なんというか、見た目はとてもお似合いでほのぼのした感じの空気が漂っている。
「え~っと…でもシエル君の方はサビト君がしたいと言えばできるそうなんだけど…」
と、空気を読まず暴露する私に、アキちゃんが
「例えシエル君でもそれはダメッ!」
と、即言うので、さすがに彼女としてはNG案件だよねと思っていると、続く言葉が
「サビト君はギユウちゃんのだからっ!
そこだけは絶対に譲れないっ!!」
で、ああ、そうでしたね、この人も拗らせた人だったね…と、思い出した。
そこでシエル君の
「ああ、出来るかできないかという話だったからね。
実際はサビト君はギユウ君を好きな部分も含めてサビト君だというか、それこそがサビト君だから、ありえないわけだけど。
相手が男だとか僕だとかいうこと以前に、恋人がいて他に目が行く時点で、解釈違いではあるな」
という補足に
「だよねっ!」
と、頷きあう二人。
オサレッティなんだよ?シエル君って。
いかにもお坊ちゃまって雰囲気なのに、言ってることがまんまオタク。
「まあなんというか…人生の指針みたいなもの?なんだよね、僕にとってのサビト君は。
こうなりたい図っていうのかな?
だから僕に向き合うこと、僕に合わせることは正直望んでいないし、何かあるなら僕の方が合わせるかわりに、僕がこうあって欲しいと言う理想的な相手であってほしい。
優れた人間性の優れた生徒会長であって、恋人にとっては頼もしい男で、友人にとっては誠実な人間。
ただ、彼も人間である以上、全てにおいて正しく優れている存在であるということはストレスも感じるだろうし、ゆがみも生じるだろう。
それを彼が望むレベルでは過ちを正し、彼が望むレベルでは許容し、最終的には存在を受け止める相手としての能力という意味合いでは、ギユウ君のことは評価している。
ようは…その飴と鞭のバランスが意識的にか無意識にかはわからないが、サビト君の望むものと合致しているということだね。
飽くまで僕は彼女単体には価値をそれほど感じないけど、サビト君といる彼女という意味では大変買っているよ?」
と、少し小難しい言い方で言うシエル君の言葉を、隣でアキちゃんが
「ギユウちゃん単体で推してはいないけど、推しの彼女としては最高の人材だと思ってるってことですね」
と、実にわかりやすく通訳をしてくれるのが面白かった。
その後、アキちゃんの方から
「私は昔はサビト君単推しだったんですけど、今は両方個々にも推してるし、カップルでも推してるんです」
という言葉が出て、そこからようやく本題。
サビト君とギユウちゃんの二人についての個々の話が始まったのだった。
*****
0 件のコメント :
コメントを投稿