清く正しいネット恋愛のすすめ_157_ネトゲ合宿の日々

「「「…一緒に…行きたかったっ…」」」

海底神殿に行った翌朝、彼女トリオがその話をすると、彼氏トリオが揃って拳を握り締めて無念の表情で呻いた。

「空太はとにかく、伊黒とウサは彼女達とのイベントくらいしょっちゅう行ってんだろうが」
と、それに宇髄が苦笑して言うと、

「「でも11月9日に行った海底神殿はその時だけだろうっ!」」
と、錆兎と伊黒が主張する。

いや…それはそうだけどよ…とその勢いに押されて宇髄がやや引き気味に言った。

そこで義勇が
「錆兎も何か海底神殿で欲しい物あった?
なら、また今晩にでも行く?
昨日はマコモちゃんの目当てのアミュレットは出たけど、カナエさん達の欲しがってたポセイドンの盾は出なかったから…。
あ、でも、もしかして錆兎も盾希望?
それならロット勝負になっちゃうけど」
と、提案すると、錆兎は
「行く。俺はポセイドン盾は持ってるから要らん。
単に義勇と共に海底神殿に行くことに意義がある」
と、即答する。

そんな二人の会話に亜紀が
「あ…でも、今日と明日は胡蝶さん姉妹もキョウさんも家族旅行って言ってましたよね。
昨日のメンツで行くにしても人数足りないかも…」
と、雑談タイムに話していたことを思いだして言うと、もうすっかり行く気になっているのだろう。

錆兎が
「キョウとカナエのタンク2名の代わりに俺と空太が入って、ヒーラーは村田がシノブの代わりに入るってことで問題ないだろう。
あとはギユウが白で、最低限タンクとヒーラーが埋まれば、あとはミツリとオバナイ、伊藤と天元で行けないか?」
と、言い出し、伊黒が
「メンバー的には問題ない」
と、こちらもすっかり行く気で答えて、村田は
「俺は相変わらず拒否権なしね」
と、苦笑した。


その後は、義勇が武藤の弟を道場に入門させれば守ってくれる人間も増えるんじゃないかと言う真菰の伝言を錆兎に伝える。

全く躊躇なく言う義勇に、役員のみで留めるという情報をあっさり真菰にまでバラしてしまっていることに亜紀は動揺するが、錆兎は驚く様子もなく、しかしそれを気にしている他にも当然気づいていて、

「あ~…真菰は別だから。
俺以上に人脈も力もあって、色々頼れるし、当然信用も出来る。
胡蝶姉妹と実弥は少しばかり想定の範囲外だったが、まあ、カナエさんがいればしのぶも暴走しないだろうし、実弥は……うん、悪気なくポロリしないように天元、気を付けておいてくれ」
と、苦笑交じりに言った。


とりあえず武藤弟については錆兎から理事長を介して武藤両親に連絡を取って打診するということで一旦落ち着いて、女子3人で示し合わせて、お菓子の買い足しに行きたいと申し出てみたが、何故か却下されて、買い物なら男性陣が行くからと言われるが、買いたい物が実はポッキーなので、あまり知られたくはない。

そこで蜜璃が
「…村田君…お願いしていい?」
と、村田を指名。

「え?俺?」
といきなりのご指名にきょとんと自分を指さす村田。

それに指名されなかったのが不満らしい伊黒が
「貴様…せっかく甘露寺がわざわざ頼んでくれているのに、身の程知らずにも断ると言うのかっ!!」
と、襟首をつかむ。

「い、いや、別に断らないけどっ!
断らないけど、なんで俺だったのかなって思っただけでっ!
行くのは全然良いけどっ!」
と、その勢いに村田が引き気味に言うのに、亜紀が慌てて

「あのねっ!せっかくの合宿だし、蜜璃ちゃんも少しでも長く伊黒君と居たいんだよっ!
私も空太君と居たいし、義勇ちゃんも錆兎君と居たいよねっ!
宇髄君は昨日買い出しに行ってくれたし、今日は村田君かなってだけなのっ」
と、間に入って村田を掴む伊黒の手をそっと外させる。

「…なるほど、そうだったのか。
確かに昨日の夜は俺達はドレス作りで忙しかったしな。
一緒に居る時間を作れなくてすまなかった、甘露寺。
村田、さっさと買い物に行ってきていいぞ」

それで機嫌が浮上したらしい。
伊黒は村田には興味がなくなったらしく、甘露寺に向き合った。


こうして彼女組の希望も通ったところで、昨日夜なべして作ったドレスを彼氏組が披露。

「あ…義勇ちゃんのドレス、もしかして…アリアの?」
と、それに気づいたのは亜紀だった。

色合いは全体的には濃い青で、肩が出ているが袖は流れる水のように長く綺麗なドレープを描き、胸元の金の花のブローチが、ドレスの左右を飾るリボンの中心に留められた、胸元のそれよりもやや小さめの金細工の花のブローチと細い金鎖で繋がっている。

その特徴的な形状は、アニメ【エルサイア・オデッセイ】のヒロインが身につけているドレスそのものだった。

亜紀の指摘に錆兎は
「ああ、実は以前に茂部太郎が勧めてくれたんだが、真菰もなんだかそのアニメを見ているらしくて、それに出てくるヒロインの衣装を作成するための詳細とかを送り付けられたんで、普通のドレスの型紙をベースに、それ用に造り変えてみたんだ」
と、頷く。

その後…ヒロインが…義勇に似ててすごく可愛くて……と、少し恥ずかしそうに小声で付け加えた。

そして
「うんうんっ!
私も、義勇ちゃんてアリアそっくりだって思ったっ!!
しかも錆兎君もカインそっくりだから、もうリアルでカイアリ見てるみたいで。
どうせなら錆兎君もカインのコスして並んで見せて欲しいくらい!」
と、普段は大人しい亜紀が少し食いつき気味に言うのに、

「そうなのかい?
錆兎君に似た主人公のアニメなら、僕もぜひ履修しないと!
亜紀君、今度、僕にも教えてくれたまえ!」
と、空太もそれに食いついてくる。

そこで錆兎が衝撃の発言。

「俺の衣装まで作るかどうかは別にして…実はレジェロの制作会社の社長が兄弟子でそこからの未発表情報なんだが…11月の下旬にレジェロで【エルサイア・オデッセイ】コラボやるらしい」

「ええええーーーー!!!!!」

亜紀が叫ぶ。


「それっ、ドレスとか実装されたりするんですっ?!
取らないとっ!!万難を排してゲットして、ギユウちゃんに着せないとっ!!」
と言う亜紀の横では
「当然錆兎君似の主人公の衣装も実装されるんだよね?!
それは何を置いても取ってスクショ撮って待ち受けにしないと!!」
と、彼氏がさらにマニアックな事を言いだす。

「お前ら…カップルでカップル推しなのな…」
と、呆れたため息を吐き出す宇髄。

「茂部太郎とかも喜び過ぎて発狂しそうだよね…」
と、同じく呆れ混じりの苦笑の村田。

本来の目的であるはずの暴漢対策などどこへやら、合宿組は全員レジェロをやっていることもあって、すっかり気持ちはネットゲーム一色となっていったのである。




Before<<<    >>> Next  (1月1日0時公開予定) 



0 件のコメント :

コメントを投稿