初めて出る外。
大丈夫、バスの乗り方もお金の払い方も調べてきた。
身分証明書の住所は中立地帯のホワイトアース。
空気の良い、病院が集まっている地域だ。
そのエリアは様々な病人が集まっているため、ずっと入院をしていたりする人間も少なくない。
ゆえに世間知らずだろうと怪しまれないとの計らいだ。
先天性の心臓病でずっと入院していたが、ようやくドナーが見つかって手術が成功して出歩けるようになって旅行に来たホワイトアース地域の人間…というのが玉壺から用意された身分で、リアリティを出すためになんと開胸手術までしたのだ。
ずっと義勇の功績だけで出世してきた玉壺なので、なんのかんの言って錆兎を倒して現状を打開したいらしい。
そのために義勇の他にも色々手を打ってはいるらしいが、詳細は知らない。
ともあれ、義勇も他に構っている余裕はない。
休暇中の錆兎を追うようにバスで海辺のリゾート地シーライトから高原のサンルイまでの長距離バスのチケットを取ってとりあえず接触をと思ったのだが、あろうことか寝坊した。
急いでホテルをチェックアウトして、荷物を抱えてバス停に急ぐ。
目の前でドアが閉まりかけているバスに向かって叫んでみるが間に合いそうにない。
次のバスが出るのは二日後だ。
これでそれでなくても1年と短いタイムリミットがさらに短くなった…と、目眩がした。
力がぬけてガックリとその場に膝をつく。
そのまま走り去るバスのエンジンの音が聞こえてくるかとおもいきや、エンジンは空ぶかしされたままで、代わりに
「おい、どうしたんだ?大丈夫か?!」
と、思い切り側で声がしてぎょっとして顔をあげた。
太陽を背に差し出される手を呆然と見つめていると、顔の前でその手が振られる。
咄嗟に反応できないままいると、膝裏に手が回って、ひょいっとそのまま抱き上げられた。
え?ええ??
戸惑って硬直している義勇に構わず、手の持ち主は後ろを振り返り、
「すまん、誰かこいつの荷物をバスに乗せてやってくれっ!」
と、声をあげる。
「は、はい。」
と、運転手が駆け下りてきて義勇のバッグを中へと運ぶ。
そのまま座席上の網棚に荷物が置かれた
そして義勇を座席に下ろすと当たり前にその隣に座る男。
実に珍しい宍色の髪にきりりと凛々しい太めの眉。
その下の綺麗な藤色の目は意志の強さを思わせるように少し吊り目がちだが澄みきっていて、口元から右頬にかけて大きな傷がある。
が、その傷痕を含めても随分と男らしく整った顔立ちで、そんな彼に対する義勇の第一印象は、全くそのまま
──顔がいい…。
だった。
その正体を知らなければただのイケメン旅行者だと思っただろう。
そう…その正体さえ知らなければ……。
義勇をバスの中に運び込んだ男は鱗滝錆兎…
そうだ、まさに義勇がターゲットとしている男本人だった。
次のバスが出るのは二日後だ。
これでそれでなくても1年と短いタイムリミットがさらに短くなった…と、目眩がした。
力がぬけてガックリとその場に膝をつく。
そのまま走り去るバスのエンジンの音が聞こえてくるかとおもいきや、エンジンは空ぶかしされたままで、代わりに
「おい、どうしたんだ?大丈夫か?!」
と、思い切り側で声がしてぎょっとして顔をあげた。
太陽を背に差し出される手を呆然と見つめていると、顔の前でその手が振られる。
咄嗟に反応できないままいると、膝裏に手が回って、ひょいっとそのまま抱き上げられた。
え?ええ??
戸惑って硬直している義勇に構わず、手の持ち主は後ろを振り返り、
「すまん、誰かこいつの荷物をバスに乗せてやってくれっ!」
と、声をあげる。
「は、はい。」
と、運転手が駆け下りてきて義勇のバッグを中へと運ぶ。
そのまま座席上の網棚に荷物が置かれた
そして義勇を座席に下ろすと当たり前にその隣に座る男。
実に珍しい宍色の髪にきりりと凛々しい太めの眉。
その下の綺麗な藤色の目は意志の強さを思わせるように少し吊り目がちだが澄みきっていて、口元から右頬にかけて大きな傷がある。
が、その傷痕を含めても随分と男らしく整った顔立ちで、そんな彼に対する義勇の第一印象は、全くそのまま
──顔がいい…。
だった。
その正体を知らなければただのイケメン旅行者だと思っただろう。
そう…その正体さえ知らなければ……。
義勇をバスの中に運び込んだ男は鱗滝錆兎…
そうだ、まさに義勇がターゲットとしている男本人だった。
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