一般人初心者ですが暗殺業務始めます3_接触開始

「お前、藤野屋ホテルに泊まってただろう?
俺もそこに泊まってたんだ。
で、少々気になっていたんだが…」

気分悪くなったら遠慮なく言ってくれな?となんだか人がよさげな様子でそう言ったあと、男はにこやかに話し始めた。


まさか…つけていたのがバレてたのかっ?!
と、当たり前に青くなる義勇に、錆兎の方がかえって焦ったように、顔の前で両手を振った。

「いや、違うぞっ!別に変な意味じゃないっ!
単に自販の使い方がわからなくて従業員に聞いてたから珍しいなぁと思って…」

言われて今度は赤くなった。
無知なところを見られていたのか…。

軍にいた頃は義勇の存在は玉壺がひた隠しにしていて部屋から出ることはほとんど許されていなかったし、そもそもわざわざ買うまでもなく、飲み物なんかは当たり前に部屋に用意されていた。


「仕方ないだろう。
今までほとんど部屋から出た事なんかなかったから、使った事なかったし…」
とボソリと言うと、錆兎はきょとんとクビをかしげた。

「部屋から出たことないってどんな生活してたんだ」

言われて初めて義勇は自分が失言したことに気づいた。


怪しまれたっ!

スパイとバレたらリストラどころか即捕まって情報引き出されて処刑では?
どうしよう…と、脳内を悪い想像がくるくる回る。

ところが相手は何故かそうは思わなかったらしい。
形の良い眉を少し寄せて、心配そうに顔を覗きこんできた。


「なあ、お前さっきもそうだったけど、どこか悪いのか?
顔色悪いぞ?」


言われて思い出した。
そうだ…自分は世間知らずな病人設定だったんじゃないか。


「ごめん…あとでちゃんと話すから、少し休んでも構わないだろうか?
ひどく疲れてるんだ」

まだ目的地まではかなりの時間がある。
もう一度話す内容をきちんと脳内でまとめて矛盾が出ないようにしてから話そうと、義勇は一旦寝るふりをしてインターバルを置くことにした。

実際緊張しすぎて顔色が悪くなっていたのだろう。
錆兎はその言葉を疑うことなく、

「ああ、かまわないぞ。俺にもたれていろ」
と、義勇の頭を引き寄せて自分の肩にもたれさせた。


お日様の匂いがする。

初めて外に出て神経を張り詰めていたせいか心地良い人肌のせいか、眠るフリをするつもりが義勇はなんと本当にそのまま寝入ってしまった。


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2 件のコメント :

  1. 錆兎の言葉の中の「…俺に持たれていろ」ついつい、え?いきなり抱っこ?と思いたくなってしまいますが→凭れるですよね(;^ω^)

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    1. はい、その通りです💦
      修正しました。
      ご指摘ありがとうございます😄

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