オンラインゲーム殺人事件15_第1~2の殺人─我妻善逸の場合

本当に何がなんだかよくわからない。
このゲームのプレイヤーが1人殺されたらしい。


それ自体もよくわけがわからないが、その状況で自分以外、仲間たちがほとんど動揺していないように見えるのがもっとわからない。

殺人だよ?殺人!
ドラマじゃなくてリアルだよ?!

と、善逸は明日は我が身では?と非常に恐ろしくて動揺しまくったのだが、仲間内の実質的なリーダーであるサビトは

『殺されたの、参加者だよね?!参加者だよねぇぇーーー!!』
と、叫ぶ善逸に
『ああ、鈴木大輔な』
ごくごく当たり前に、ほら注意したとおりだろう?と言わんばかりに言うのだ。

あまりに冷静なサビトに、恐ろしくない理由でもあるのか、リアルでもとてつもなく強いのかと聞いてみたら、あっさりと、

「ああ、俺は強いぞ。とりあえず柔道、空手、剣道は有段者だ
なんて返ってくるので、善逸は白目を剥いた。

しかもそれはサビトだけではなかった。
普通の人間仲間だと思っていたタンジロウまで空手をやっているという

なに?なんなの?
このゲームって自衛できる人間以外いないの?!
と、叫びたい。
思い切り叫びたい。

リアルサバイバルゲーム要素まで組み込んであったとかか?
そんな要素は本気で要らないんだけど…と、ごくごく普通の高校生である善逸は涙目だ。

しかもゲーム内と同様に、おそらく一番強くて一番周りを守れるのであろうサビトは、そんな渦中だというのに、何も言わないギユウが心配だからと離席中。

『俺も危険だからっ!
ほんっとうに危険だから保護してあげてぇえ~~!!!』
との善逸の叫びは届かない。

『俺も気にされたい。保護されたい』
とぶつぶつ言う善逸に、

『う~ん。ほら、ギユウさんはほとんど話さないからこちらから聞き出さないとだし』
と、タンジロウが苦笑する。

『俺も黙ればいい?黙れば心配してもらえる?』

もうタンジロウもそんなことを言われても困るだろうとは思いつつそう言うと、根っから人のいいタンジロウは

『俺はすごく心配してるよ?ゼンイツのこともね』
と、そんな風に言ってくれた。

『タンジロウ…優しい…』
俺は長男だからね!次男なら自分の恐怖が勝ってしまってたかもしれないけど…』

と、まあそれに続く言葉は非常になわけではあるが……


その日はサビトはそのまま返ってこなかったので、タンジロウと2人で素材狩り。
自分たちより遥かに格下の敵をアイテム目当てに狩るので、回復も盾もいらない。
だからこうしてタンジロウと2人で放置された時はたいてい素材狩りだ。

その後その日は0時にログアウトをして、フリーメールのメルアドを取った。
これが本当にログインしていない間の命綱になる。



そして翌日、そのメルアドをメグの所に送る。
その後4人でレベルあげには出かけずに締め切りの21時を待った。
30分後…メグからまたメッセージが送られてくる。

ドキドキしながら開くと、9人分のメルアドと共にメグからの結果報告。

『こんばんは。今回は私の提案に賛同して頂いてありがとうございます。
8人の皆さんが送って下さったので、私のを合わせて9人分のメルアドを送らせてもらいます。
一応21時を待って返答の無かったショウさん、ヨイチさんに声をかけてみたのですがショウさんは今回の事で怖くなったのでゲーム自体をやめるから参加しないとの事でヨイチさんは全く無反応なので、参加の意志なしと考えさせてもらうことにしました。
一応間違いないとは思うのですが、各自ご自身のメルアドを確認の上、間違いがありましたらメグまでまたメッセージをお願いします。』

とりあえずメグのメッセージに目を通して、4人でそれぞれ自分のメルアドを確認した。
善逸達4人に関しては確かに全員のメルアドが正しく記載されてるので、ひとまず安心だ。

『でも…さ…』
とりあえずメルアドを確認し終わったところで、善逸はふと気になってた点を口にしてみる。
『こんな事件起こってるわけだし、ショウみたいにやめるっていうのも一つの選択だよね…』
善逸の言葉にサビトがため息一つ。

『えっと…な、それ無駄』
と、言った。

『なんで?やめちゃえば一億もらう権利もないわけだし殺す必要ないじゃん?』
『やめられれば…な。でもこれってある意味やめられないからな
『…?』

意味わかんない…PCからゲーム削除してディスク捨てちゃえばいいだけじゃん…と善逸が続けると、サビトがわかってないな、とまたため息をついた。

『最初の主催からの手紙であっただろ。
一度やめても再開可能でディスク紛失したり破損してもまた送るって。
つまりな、本人がやめたつもりでも実際はエントリーされてる状態なわけだ。
だから犯人から見るといつまたライバルになるかわからない相手なわけだ。消す対象からは外れない。』

うっそぉ………と、善逸はまた青ざめる

『どうすれば…いいのさ?』
逃げても逃げても逃げられない事に気付いて目の前が一瞬暗くなる。

『まあ…犯人が捕まるか誰かが魔王倒して一億手にするかだな』
当たり前のように言うサビト。
どうしてそんなに平静でいられるのか理解できないっ。

そう口にするとサビトはあっさり
『ん~平静ってわけじゃないが、とりあえず騙されて自分のリアル明かしたり誘い出されたりしないように気をつけてれば大丈夫だろ』
と答える。

…そうなんだけどさ、そうなんだけどね……ああ、そうだよねっ、サビトは絶対に騙されない自信あるんだよねっ。
と、善逸は脳内でヒステリックに思う。

サビトに色々聞くまでは実は善逸も無謀にもそう思ってたのだが……
今は全然自信ない…一人怖い…みんなと近くにいたい!!
ああ~もういっそのことサビトと脳みそか筋力のどちらかを取り替えたいっ!!

そんな事を思いながら半泣きでレベル上げにはげんだ。




そうしてよく眠れぬまま、翌日。
朝は早く起きて朝食と爺さんの弁当を作り、仕事に送り出す。

これは夏休みだろうとなんだろうと変わらぬ善逸の仕事だ。
その後は夏休みは普通にぷらぷらと過ごす。

…が、怖いので外には出られない。
というか、家の中でも怖いので爺さんが仕事に行ったら窓と言う窓は全部閉めて鍵をかけて、ひきこもっている。
それでも何もしてないとすごく怖くて、頭に全然入ってこないのだが、テレビをつけた。


でも…考えてみれば可能性が高いってだけで、絶対ではないんだよね。
鈴木大輔が殺された理由…リアルの何かの可能性もなくはないよね…。
そうだといいな……そうだといいのに……
そんなニュースやってないかな……

と、そんな事をおもいながら、カタカタと震えながら藁をもつかむ気持ちでチャンネルをニュース番組に変える。

丁度お昼のニュースが始まった。
画面を凝視する善逸の期待とは裏腹に、別の高校生が誰かに殺されたというようなニュースはあったが、鈴木大輔の事件の新しい情報は何もない。

不安を抱えたまま一日が過ぎていく。

夕方には夕食を作り始めて、夜、仕事から帰った爺さんと食事をとって、食事を終えて部屋に戻って時計を見るとようやく19時だ。
そこからはひたすらカチカチ動く時計の針を凝視して過ごした。


40…50…55…590!
時計の秒針が12を指すと同時に震える手でゲームのアイコンをクリックする。

PCが画面を読み込む時間すらもどかしい。
早くこの押しつぶされそうな不安な時間から解放されたい。

読み込みが終わって画面が明るくなる。
始めてアクセスした時と変わらぬ光景が安堵の涙でにじんだ。

涙を拭うと目の前にはもうすっかり馴染んだ革鎧のシーフのキャラクタが笑顔を浮かべている。
『おはようっ!』
と、いつものように言ってパーティに誘ってくれるその態度になんだかホッとした。

続いてちょっと整った顔立ちのベルセルクが姿を現し、いつものようにパーティーに加わる。
最後にきたのはふんわり癒し系のプリースト。
『待たせた』
と言ってパーティーに入る。
いつものメンバーが揃ってなんだかホッと一息つけた気がした。

『レベル上げに行こう!』
音声じゃないし、あくまでディスプレイの中のキャラクタなのだが、なんとなく明るく爽やかな雰囲気を感じるタンジロウの言葉。

そこでいつもなら、
『じゃ、行くぞ』
と先に立って歩き始めるサビトが、今日は
『あ~…ちょっと今日は待ってくれ』
と、なんだかいつもと違って歯切れが悪い感じで言った。

なんというか…少し厳しい表情してる気がする。
もちろんゲームの中のキャラクタがそこまでリアルな表現をするわけじゃなくてあくまで善逸の想像なのだが…
そしてそう感じてたのは善逸だけではないらしい。

『サビト…?どうしました?』
タンジロウも聞いてくる。
『いや…悪いな、リアル事情で30分ほどキャラ放置するから。
なんなら3人で先行っててくれ』

……なんか嘘をついている予感がした。

『じゃ、ここで待ってる』
と、ギユウがそう言ってさっさと噴水の端に腰をかけるので、サビト待ちが完全に決定だ。
タンクだけでなくヒーラーまでいなかったら、レベル上げにならない。

その後、噴水に入って楽しげに水を飛び散らせて遊んでいるギユウ。

そうしてる間にもみんな続々とインしてきた。
そしてそれぞれの目的の場所に消えていく。

やがてもう少しで30分という時、サビトが動き出した。
『待たせて悪い、行こう』

いつもみたいに先に立って歩き出すサビトの後を勝手についていく追尾設定にして、善逸はサビトにウィスを送った。

『んで?結局なんで離席のふりしてたの?』
という善逸の問いに、特に隠す気はなかったのだろう、サビトが言った。

『今日、昼にまた高校生殺害のニュース流れたのを知っているか?』
あ~そいえば鈴木君の情報ないかとニュース見てた時流れてたな。
と、それを言えば、サビトは
秋本翔太な、今度は』
『んで?それが何か?』
聞き返す善逸にサビトは一瞬沈黙。

『なに?』
もう一度聞き返すと、ため息をついた。

『気に…なってなかったのか?』
『へ?』
『いや俺はあれももしかしたら参加者の誰かなんじゃないかなと思ってみたわけだが…』

うっあああ~~~!!!!
と善逸はリアルで叫びかけて、爺さんが居ることを思い出してかろうじて声を飲み込んだ。

確かに今日は死んだゴッドセイバーと辞めたショウ以外の10人みんなインしていた。
逆に言えばショウはインしていない
ショウ=秋元翔太かよ!!と善逸は青くなった。

それでもサビトに淡々と
『まあ、今日からはメルアドも作ったし、昨日俺がした注意を守った上でも何かあったら俺にメールよこせ。
竹刀持ってかけつけてやるから』
と、ありがたいお言葉を頂くと、昨日よりは動揺も少ない。

サビトがいれば全て大丈夫なんだろう…本当にそんな安心感を与える男だ。

不安がだいぶ減ったところでちょっと気分も軽くなって、善逸が二人の後を追いかけようと駆け出し始めた時、またメッセージが送られてきた。
今度は…アゾット…って誰だっけ?


『アゾットって…男プリーストだったよな?』

みんなの所にも同じくメッセージがきたらしい。
サビトが足を止めて振り返った。

『ですね。いかにもヒーラーって感じのあたりが柔らかい奴だった気がします』
タンジロウが答えて、戻りますか?と聞くと、サビトは、そうだな、と答えて反転した。

『こんばんは。参加者のアゾットです。
なんとなく気にしていらっしゃる方もいるとは思いますが、今日の昼過ぎに秋本翔太君という高校生が殺害されたというニュースが放映されました。
参加者の一人、イヴさんによると、殺された秋本君は元このゲームの参加者のショウさんらしいです。
親しかった相手が二人とも殺害された事でイヴさんも非常にショックを受けていますし、犯人の男の次のターゲットが自分なのではと、とても怯えてもいます。
もちろん、僕を含めて全ての参加者がそのターゲットになりうるわけですから誰しもが他人事ではありません。
そこで下手に相手の事を知らないまま不安を抱えるよりは、一度全員街の広場に集まってどういう参加者がいるか顔合わせをしませんか?
現在僕はイヴさんと共に街の広場の噴水前にいます。
来られる皆さんはぜひ、噴水前までお願いします』

うあ~そりゃあ不安…だよね、イヴも。
と、色々トラブルもありはしたものの、基本的には人の良い善逸は今の自分の立場を思い返して彼女に心底同情した。

なにしろ自分には頼れる男サビトがいて、自分を心配してくれているというタンジロウもいる。
もしそんな頼れる筈の仲間が次々死んでしまってひとりぼっちになったら…始めから一人なより心細いだろう。



善逸達が広場に戻ると、そこにはイヴが立っている。
そしてその隣にはギユウと同じく十字架模様の入った服を着た優しげな男プリースト、アゾット。
それと…黒いロングコートの…格好からしてたぶんウィザードだと思う、エドガー。
あとはでかい弓を背負った見るからにアーチャーなオスカーが集まっていた。

で、善逸達4人入れて8人…ということは…亡くなった二人を抜かしても二人足りない。

『例のメルアド主催者のメグとメルアドスルーのヨイチが来てないな』

横でサビトがつぶやく。

よくそんなにすぐ思い浮かぶな~。
やっぱり頭の出来が違うんだろうか……サビトは絶対にリアルでも賢い学校だよな。

などと、善逸はもうこのゲームを始めて何度も思った事をまた思う。


そんななか、
「やあっ!君達いつも一緒にいるよね。仲いいの?」
と、善逸達の姿を認めると、オスカーが近づいてきた。
そしてそのままサビトの横にぴったりと寄り添う様に立つ。

スっと即一歩引いて距離を取るサビト。
するとまたオスカーが一歩近づき、またサビトが距離を取る。
しばらく二人はそんなやりとりを繰り返してる。

「サビト、いい加減にしなよ、大人げない」
思わず言うと、
「ほっとけ」
と言うサビトはいつもの事なのだが、オスカーもいきなり
「そうだよ、君には関係ないでしょ?馴れ馴れしいな」
となんだか嫌~な言葉を吐いてくる。

なんだこいつ………
ムッとして黙り込む善逸に

「いきなりそんな…」
とさすがにタンジロウが言いかけるが、それを最後まで言うまもなく、

「ふざけるなっ!馴れ馴れしいのはお前だっ!気味が悪いっ!!!」
とサビトがキレた。

「こいつらは俺の仲間だから馴れ馴れしかろうがいいんだっ!
それを見ず知らずのお前にグダグダ言われる筋合いはないっ!!


サビト~……
善逸はちょっと感動した。

こういう時のサビトは毅然としててカッコいいっ!
もう拍手喝采したい気分だ。
と、思ったら、隣でギユウが無表情で拍手している。


言われてオスカーは一瞬沈黙。
あ…ちょっとショック受けてるかな…と思ったら、またいきなり

「サビトってさ、すごぃ男らしいよなっ!そういう奴って僕超好きだよ!
と、なんだか嬉しそうにまたピタっと距離をつめた。

うあああ…なんだかなんていうかこの人って…絶対に変!!
と、さすがに善逸もドン引きする。

「リアルもさ、そんな感じ?服とかどんなの好き?
リアルでも背そこそこ高い?体格は?サビトって鍛えてはいそうだよねっ。
制服は学ラン?ブレザー?サビトのイメージだと学ランって感じだけど、ブレザー着崩したりとかもなんかいいねっ、シャツのボタンはずしちゃったりとかしてさ…
寝る時ってさ、パジャマ?Tシャツ?それとも着ないで寝ちゃったりとか?
あ、でも意外なとこで着物とかも似合うかもっ。
あ~、そだ、トランクス派?ブリーフ派?…………」

と…止まんないよ、この人。
サビトはおもいっきりひいてる。てか、リアルで怯えてるだろ、これ絶対…。
と、青ざめる善逸。

しかしいい加減に苛立ちが限度を超えたのだろう。
サビトは本気で追い払う気になったらしい。

「お前…いい加減にしとけよっ!これ以上しつこくしたら主催者に通報するぞっ!」
そこまで言ってようやくオスカーはサビトが本気で怒っているとわかったらしく、肩をすくめて離れて行った。


そこでようやく落ち着いてふと視線を他に移してみると、怯えきったイヴを一生懸命慰めてるアゾットが目に入る。
ふわりとしたジョブ装束もあって優しげな癒し系という感じがするのはギユウ一緒だが、ヒーラーというよりも貴族様といった雰囲気だ。

そんな王子様然とした雰囲気のアゾットが
「みんな…みんな殺されちゃった…。」
と、あるいはリアルでも泣いているのかもしれないイヴのキャラにぴったりと寄り添って
「大丈夫…これからは僕が出来る限り側にいて君を守るから。なんでも相談して?」
と言う図は非常に絵になる。

これほだされるよなぁ。
なんていうか…前の二人は女王様イヴの従者って感じだったけど、アゾットはイヴ姫のナイトって感じで、少しロマンティックな感じがする…
と、善逸はそれを微笑ましく見つめた。


そんなその二人の隣にはエドガー。

「ゴッドセイバーの場合…確かに実名言いふらしてたらしいからわかるんだけど…
ショウは…どうして殺されたんだろうね?実名知ってたのイヴだけじゃないのかな?」

非常に冷静な口調でつぶやく彼に、アゾットは

「色々聞きたいのはわかるんだけど、彼女も本当に今日起こった出来事ですごく傷ついてるんだ。
せめて今日一日はそっとしておいてあげてくれないか?」
とイヴをかばうように二人の間に入った。

「でもさ、彼はメルアドすら教えてないんだよね?」
と、それでもさらに食い下がるエドガーに、イヴがアゾットの後ろから顔を出す。

「えと…ね、それに関してなんだけど…気になる事が…」

無理しないでいいよ、というアゾットに、
「大丈夫、今はみんなそのために集まってるんだし…」
と気丈な様子で答えて話しだすイヴ。

けなげだなぁ…と、善逸は彼女のそんな様子に好感を持った。

「彼ね…メグちゃんにメルアド送ったって言ってたの。辞めるって話もしてないって
なのに私の所にきたメッセージでは彼は辞める事になってたから、びっくりしてたわ。
他の誰かと間違えたか何か勘違いしたのかもしれないしメグちゃんに一度確認のメッセージ送ったから返事待ちって言ってた…」

え……

それを聞いてアゾットもエドガーも一瞬固まる。

「確かに…エドガー君が二人と仲良くて色々聞いてた私を疑うのももっともだと思う。
…でもね…私もホントに今怖くて怖くて震えが止まらないの…信じてもらえないかもだけど…」

そこでイヴの言葉は途切れた。
そんなイヴをかばうようにアゾットがまた彼女を後ろに隠してエドガーの前に立ちはだかった。

「仮に…僕が犯人だとしたら、真っ先に自分が疑われる様な殺し方はしないと思うな。
君もそう思わないか?」

まあ…それは確かに……と、これには善逸もリアルで頷いた。

ゴッドセイバーはともかくとして、ショウは実名とか言いふらしたりしてはいないわけだから、普通は仲良くしててリアルの事も知ってる可能性が高いイヴが疑われるのは必至だろうし、犯人だってそんな風に自分が疑われるような事しないだろう。

その言葉にエドガーもさすがにちょっと黙り込んで、それからあたりを見回した。

「キーパーソンはメグって事かな。彼女に事情を聞けば少しは状況が見えるかも。
だけど…来てないな」

エドガーの言葉にアゾットはちょっと困った様にため息をついた。

「僕がインした時には確かにいたんだけどね…。何故だかログアウトしちゃったみたいだ。
送ったメッセージが届かない。明日事情を聞くしかないね」

確信を握るキーパーソンのメグが来ていないので事情はまだ霧の中だが、とりあえずそれぞれの人物像はわかってきた。

生き残ってるのは12人中10人。

善逸達4人を除くと、
殺された二人と仲の良かった渦中の人イヴ。
メルアド交換を申し出たまま姿を消したメグ。
怯えてるイヴを慰めてる癒し系の男プリーストのアゾット。
なんだかハイテンションでサビトを追い回してくるアーチャーのオスカー。
周りから情報を聞きまくって犯人を特定しようとしているらしい男ウィザードのエドガー。
そして……このゲームを始めて以来、他人と一切連絡を取ろうとせずメルアド交換すらスルーしてる謎のアーチャー、ヨイチ……

その日はとりあえずアゾットが音頭をとって、それぞれ自己紹介をして解散したが、みんなが微妙に全員を警戒している嫌な雰囲気だった。

ショウを殺した犯人がゴッドセイバーを殺した犯人と同一人物だとすると犯人は男でおそらくこの中にいるのだ…

いったい誰なのだろうか……




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