オンラインゲーム殺人事件7_ネットは意外に怖いらしい(4日目)──我妻善逸の場合

もう仲間も出来た事だし急ぐ事もない。
善逸は今まで通りのペースで20時過ぎにのんびりとインした。

昨日サビトが言っていた。
みんな復活ポイントがある街中の中央の噴水広場あたりでログイン&ログアウトしているらしい。
どうりで今まで誰にも会わないわけだ。
仲間が出来た今、ほんとに今更なのだが…


サビトは本当に几帳面らしく善逸がインした時にはすでにインしてて、変なとこで真面目なタンジロウも同じく早い。
善逸がインすると即サビトからパーティーの誘いがきたので入る。

サビトは例によってお説教の最中だったらしく、パーティー入った瞬間、善逸の耳にまず入ってきた言葉は、タンジロウの
『ん…わかった。気をつけます』
という声。

サビトはそれに対して
『わかればよし』
と返す。
それから二人して善逸と挨拶交わす。


まあ、それが済むと気になる事は気になるので
『なんの話してたの?』
と聞いてみると、サビトがチラリとすぐ側で通常会話垂れ流してるゴッドセイバーという厨二病っぽいプレイヤーの方をむいて言った。

『そこで通常会話でリアル情報垂れ流してる馬鹿がいて、タンジロウが同じ事しようとしてたんで注意してた。
誰が聞いてるともわかんないところでリアル情報垂れ流すなんて、悪用して下さいって言ってるようなもんだからな。絶対にやるなよ』

あ~、なるほどね。
ごめん、俺達互いにそれやってたかもしれない…と、善逸は苦笑する。


最初にパーティを組んだ日、タンジロウとは互いにリアルの話を少ししていた。

互いに高校2年生で、男。
自宅も都内で会おうと思えば会えない距離ではなかったから、いつか会えれば良いななんてそんな話もした。

ギユウはそんな話を振ってもあまり返答がなかったので、たぶん話す気がないのだと思ってそれ以上聞かなかったが、もしかしてサビトのように思っていたのだろうか…

それならそうと言ってくれればいいのに…と、少し寂しい気がしたが、まあ、サビトが特別に面倒見のよい性格なのだろう。
自分も初対面に近い相手なら、わざわざそんな注意はしない。


まあ、そんな感じでお説教終わる頃にギユウが来て、さあ経験値稼ぎに…となった時、サビトがいきなり商店街の方へと歩き出した。

『サビト、そっち反対。外は向こうですよ』
て、タンジロウ、お前がわかってる事は当然サビトだってわかってるって…と思っていたら、やはりサビトは

『反対じゃない。こっちで正解。
お前ら初期装備で俺についてくるつもりか、装備買え
と言って防具屋に入って行く。

なるほど…。


『すみません。それほどお金…ないんですけど…』

…と、まあ…パーティーすら知らずにただペチペチ敵を叩いてたわけだから当然と言えば当然のタンジロウの言葉。
ギユウもうんうんとうなづいた。


善逸は、自分は一応レベル相応の装備はしてるんだけど…と、思いつつ黙っていると、そんな二人にサビトはあっさり

『今回はしかたないから買ってやる。紙装備でうろちょろされても迷惑だからな。
これからはちゃんと金策もしろよ』
と、当たり前に言う。

え?買ってやるって…俺、普通にLv上げしててようやく次の装備買えるくらいの金しか貯まんないんだけど、いくら自分よりはLv低いったって二人分の装備?
どうやって貯めてんだよ、こいつ。

と、思い、善逸はチラリと今の所持金を見る。
22銀…。

一人分の防具がだいたい40銀くらいで二人分で80銀。全然足りない。


でもさすがに自分もスルーしてちゃだめ?と思ってサビトにウィス。

(あのさ…俺一応今22銀くらいなら出せるけど…出そうか?)

まあ若干情けない金額ではあるけど、スルーよりはマシ?と思って聞いてみたがサビトはきっぱり
(ん~、まあ200銀くらいはあるから大丈夫だ)
と、返してきた。

え?え?すごくない?と驚きつつも、

(やっぱさ…ジョブ差?稼げるのって)
もうプライドとか言ってる場合じゃないと、善逸が聞くと、それに対してサビトはなんのことはないような風に言う。

(いや、たぶん狩ってる敵とLv差じゃないか?必要な金額がLvによって違ってくるしな。俺はLv12くらいで次の装備に買い替えるのに200弱かかるから貯めてたんだが…)

(うあ…そんなにするの?てかそれ使っちゃって次の装備どうするんだよ?)

(まあLv下のメンバーに合わせてたら自分のLvが上がるのなんて当分先だし、その頃までには必要な額貯まるから問題ない)


その後に善逸が聞くと、サビトは隠す事もなくあっさり金策に良い敵とか効率のいい金策なんかも教えてくれた。

雑貨屋で高額で売れる素材落とす敵だけじゃなくて、雑貨屋で売っても二束三文のアイテムでも合成屋で合成してもらうと高額装備や高額素材に早変わりなんてのもあって、目から鱗だ。

つか、よくこんなすごい情報一人で集めたよな、こいつ。

一人で全然平気じゃない?
というか…こいつ何者?
なんで俺達といるの?
もうメリットないどころじゃなくデメリットありまくりじゃないの?

頭いいんだか悪いんだかマジわかんない。
いや、俺達にしたらありがたいんだけど……

などと善逸は不思議に思いつつも、ヤブから蛇を突くのも嫌なので、黙ってタンジロウとギユウの装備を見繕ってポンポンと買い与えるサビトを眺めていた。




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