続聖夜の贈り物_9章6

「あ~、もしかして双子の?」
エリザの言葉に、はい、とうなづくマシュー。


全員がまたホ~っと注目する中、子供、アルはジ~っとアーサーに注目している。
そして、おもむろに肩からかけていたバッグの中から何やら茶褐色の液体を取りだすと、グビグビと飲みほした。

とたん…いきなり背がニョキニョキ伸びる。
何故か服も一緒に伸びて行くのはマジックドールだからか。
そうこうしているうちに推定年齢10代後半くらいにまで伸びて止まった。

「あ~~~!!!」
何かを察して慌ててかけよるマシューを
「君、もう戻っていいんだぞ」
と軽く手でこづいて転がすと、アルはひょいっと軽々アーサーを抱えあげた。

「何やってんだっ!!」
と、そこでようやく我に返ったギルベルトが、慌ててアーサーをその手から取り戻す。

「何って…この人は俺のものなんだぞっ。返してくれよっ」
とアルはプク~っと頬を膨らませた。


「馬鹿言ってんじゃねえ!アルトは俺様のだっ。気易く触ってんじゃねえよっ!」

「君こそ何言ってるんだい?アルトゥールは300年も前から俺だけのものなんだぞっ。君こそきやすく触らないでくれよっ!」

「アルトゥールじゃねえっ!アーサーだっ!」

「違うっ!アルトゥールだっ!
ね、俺の事忘れちゃったのかい?アルトゥール。
俺280年も君を待ってたんだぞっ。
どうせ鈍くさい君の事だから一人じゃ戻ってこれなくなってるんだろうって思って、迎えにきてあげたんだぞっ。
俺も欠片探してあげるから、一緒に行こう?」
と、アルは今度はいきなりの展開に呆然としているアーサーに手を伸ばす。

当のアーサーはと言うと、今の状況に全くついていけてない。
ただ知らない人間にいきなり手を伸ばされて、思わず自分を抱え込んでいるギルベルトにしがみつく。

それにアルは少し傷ついた目を向けた。
「俺の事…忘れちゃったんだね…」
と言う言葉には少し可哀想な気になるが、覚えていないと言うより、会った事がないと断言できる。しかたない。

「アル、違うんだ。この人は…」
マシューの言葉も
「違わないんだぞ!」
とアルは遮る。

「どんなに時がたったって、アルトゥールが俺を忘れちゃったって、俺は絶対にアルトゥールを忘れないんだぞっ!
忘れちゃったんならまた思い出してもらえばいいんだっ。
280年もずっとずっと待ったんだっ。
思いだすまで何年かかったってたいした時間じゃないんだぞ!」

「いい加減にしとけっ!」
「いい加減にするのは君の方なんだぞっ!
あくまでアルトゥールを返さないなら、俺は君を退治しないといけなくなるぞっ!」
「おお、上等だっ!退治されんのは自分の方だぜっ!」

昨日想像した悪夢が実際に繰り広げられようとしている事に、マシューは頭を抱えた。

すでに自分の備え付けられているマグナムを構えてるアルと、紅の長剣を振りかざすギルベルト。

「お前はこっちっ!」
と、すかさずロヴィーノが呆然と立ちすくむアーサーの腕を取って自分の側に避難させ、それをかばうようにエリザがその前に立つ。


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