続聖夜の贈り物_4章2

「なんだかなぁ…お互いお互いを誤解して暴走してる気がするなぁ。
……な、話するか?
フェリちゃんはともかく、俺様とアーサーはもう運命共同体になったわけだし?
全部話してやるよ。隠し事はなしな?
その上で親様の嫌なとこがあったら言えよ。
なるべく要望はとり入れるようにしてやる。
でももう逃げるのはなしだぜ?」


「…お前の事なんて全部わかってる…。
これでも一緒に暮らしてた間にいっぱい調べたんだからな…」
頭を押しつけられたままくぐもった声で言うアーサーに、ギルベルトは小さく噴出した。

「…引かないのかよ?」
クックックと笑うギルベルトに、アーサーはおずおずときく。

「引かねえけど。あ~もうお前可愛いすぎね?なに調べたんだよ?
でもたぶんな、全然本当の俺様にはたどり着いてねえぞ、アルト」

「そんなことないっ!ちゃんとルートの事だって知ってたんだぞっ。
お前が王族なのに最前線で戦ってた人気者だってことだって…」
子供のようにムキになるその様子が可愛すぎて、ちょっと意地悪してみたくなった。
ギルベルトはアーサーの体を少し離すと、その顔を自分に向けさせる。

「じゃあな…アルト、当時俺様に誘拐されたも同然だったの気付いてたか?」
「ふえ??」
びっくりしすぎてまん丸になった目がギルベルトに向けられたまま固まる。

「ほら、知らねえ事あるだろ?」
クスクス笑いながらギルベルトはアーサーの頭を引き寄せて軽く口づけた。
チュっとリップ音をさせて離れると、まだ驚きで固まっているアーサーの顔を覗き込む。

「俺様な…アルトが思ってるほど善人じゃねえぞ?
アルトよりずっと大人で、ずっとずるくて…正しくありたいと思う自分の気持ちと葛藤しながら、でも結局アルトと違ってやりたい事は通して、やりたくない事はちゃんと避けてる。
アーサーを手元に置いたんやって、別にアーサーのためちゃう。
思えばな、最初に倒れてるアルトをみつけた時、どうしても欲しくなってたんだよな。
助けたのは善意じゃねえ。
ルッツを城に返しちまって、一人ぼっちの生活に耐えきれなくなって、親元に返してやらないとと思いながらも結局お前の身内が探しにこれないような、お前の家がある東の国から一番遠い西の果てまで連れてきて、記憶思い出して帰るって言わないように、無意識に東の国の事には触れないようにしてたんだと思う。
これは好きなんて可愛い感情じゃなくて、執着だ。
………
って、アルト?なんでそこで赤くなるんだ?
俺様、なんかお前の羞恥の琴線に触れるような事言ったか?」

てっきり引かれるか怖がられるか、そんな反応を期待していたのだが、アーサーはいつもギルベルトの予想の斜め上の反応をかえしてくれる。
耳まで真っ赤に染めてフルフルと震えているアーサーにギルベルトが声をかけると、思い切り潤んだ大きな瞳で睨んできた。

まあ…そんな顔でそんな目で睨んでも可愛いだけなのだが…。

「恥ずかしいだろ…」
「…いや、だからなんで?」
「…だって…」
「だって?」
羞恥が限界まで来たのか、アーサーは全身真っ赤になって絶句する。

そして
「だって…」
ともう一度口にした。

「うん、だって、なんだよ?」
と、ギルベルトは次の言葉を待つ。

「あ、あの、違うのわかってんだからなっ!
ただ一般的にそういう印象与えるってだけであって…」
と早口で言うアーサーに苦笑するギルベルト。

「はいはい。で?どんな印象与えんだよ?」

もうその素直でない言葉も可愛くてしかたがないのだが、ここでまたじゃれついては話が進まない。

そこで先を促してみると、アーサーは真っ赤な顔でギュッと目をつむり、握りしめた拳を振るわせると言う、もうこのまま頂きますしてええ?と聞きたくなるような、ギルベルト的に非常にツボなしぐさでかましてくれた。

「お前が…お前がすごく俺の事好きみたいじゃないかっ!」
「はあ???」

もう…なんというか『はあ??』としか言えない。言いようがない。
(なんで?なんで今までのでち~っとも伝わってねえんだよ??)
とギルベルトが思うのはしかたがないだろう。

「…みたい…じゃなくて、好きなんだけど?
ああ、正確にはちょっと違うな。
好きなんて可愛いもんじゃないって言ったの俺様か。
訂正だ。好きなんてのはとっくに超えて愛してるわ。
可愛いくて、愛しくて、欲しくてしかたない。
もう誰も来れない場所に閉じ込めて囲い込んで朝から晩まで抱きしめてキスしてそれ以上の事もして、俺様以外を見られない、俺様の事以外を考えられないようにしてしまいたいくらいだ」


Before <<<   >>>Next (4月8日0時公開予定)


0 件のコメント :

コメントを投稿