少し考えて見るが痛みと疲労でだんだん色々面倒くさくなってくる。
いっその事こちらから話を振ってやろうか?
まあ最悪死ぬだけだ。
一度は死んだつもりだったわけだから、今更なんじゃないだろうか…。
もう半分投げやりな気分でアーサーは言ってみた。
「で?戦場で拾ったってことは、敵兵って可能性高いだろ。
俺が敵兵だったらどうすんだ?
俺をここに連れてきた事ちゃんと軍に報告してんのか?
してないんなら、ばれたら敵兵かばったとかになってお前がやばいだろ?しておけよ」
そんな事は考えてもみなかったらしい。
男はアーサーの言葉にぽか~んと口を開けたまましばらく呆けていたが、次の瞬間、苦笑してまたアーサーの頭を撫で始めた。
「なんだよ?お前ホントに兵なんだったら、所属と階級は?言ってみな?」
「所属と階級?んなもん知らねえよ」
長兄の命令でいきなりあちこちの戦場に放り込まれ、適当な場所で攻撃魔法を放っているだけだ。
本当はあるのだろうが、あまりにコロコロ変わりすぎて、アーサー自身も把握などしていない。
なので事実ではあるのだが、これでアーサーが敵国の兵だと元々信じてなかったっぽい男には、完全に子供のたわごと認定されたらしい。
「で?なんで子供があんな危ない場所にいたんだ?」
と、結局聞かれるのが面倒な質問が返された。
どうやら本当の事を言うという選択肢は選ばせてはもらえないらしい。
何か信じたくなるような話を作り出せと言うのか…と、アーサーは内心頭を抱えた。
しばらくどう言えば良いのか…とアーサーが考え込んでいると、
「あのなぁ…」
と男の方から口を開く。
「お前を見つけた時の恰好な、普通のシャツとズボンだけだぜ?
あと側にいた子猫が引きずってたベスト?
どこの世界に防具も武器もつけないで戦場にくる兵がいるんだよ?」
「あ~…」
確かに子猫に警戒されて遠くへ脱ぎ捨てたなぁ…と今更ながらに思い出した。
それを言うのは簡単だが、まがりなりにも敵兵にあの強力にして高価な装備を拾いに行かれても困るわけで…
沈黙=一般人と認めたと男の中では決定づけられたらしい。
「心配しないでもいい。俺様これでも結構偉い人間なんだぜ。
だから東の国の人間だって子供の一人くらいだったら拾った事知られても全然困らねえから」
男はよいしょ、と声をかけてベッド脇の椅子から立ち上がると、
「ちょっと飯温めてくるから待っててくれな」
と声をかけて、部屋を出て行った。
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