パタンとドアが閉まった瞬間、思わず口をついて出たのはそんな言葉だった。
参戦していたと言うなら軍人なんだろうが、それにしては警戒心がなさすぎる気がする。
本人いわく偉い人間らしいし、実際に軍服もなんだか立派そうだったし、整った顔立ちはしていたものの、意識して浮かべていたのだろうか、笑みを浮かべていなければ、いかにも軍人といった感じの厳しい印象を受ける男だと思う。
なのにそんな人間がこれというのは、西の国の軍は色々ゆるいのだろうか…。
まあ魔術系の頭脳派集団である東の国からすると、肉弾戦を得意とする西の国は十分大雑把な脳筋な印象は否めないわけなのだが、これはないだろう。
百歩譲ってアーサーが子どもだったとしたって、戦場にいたら皆敵だ。
これが東の国の…例えば自分の兄達なら、子供だろうとなんだろうと尋問部屋行きだろう。
というか、子供じゃない。
童顔+肉体労働をほぼすることのない魔術師家系で小柄なため実年齢よりは下に見えるが、アーサーももう18才。
15才で初陣が当たり前な今の世の中では立派な大人である。
まあそれはさておきこれからどうするか…だ。
戦闘とは全く無関係な事で大怪我をして、敵国である西の国の軍人に助けられました…なんて帰って兄達に報告するなんて、死ぬより100倍怖い。
今こうしている事自体は変えようのない事実として……とりあえず何か土産になるような成果をあげなければ帰るに帰れまい。
「どこまで偉いやつなのかわかんねえけど…何も成果ないよりマシだよな。
うん、居座るかっ」
引き出せる情報引き出して、状況によってはその首を手土産に帰ろう…。
最悪死ぬだけだし…とアーサーは再度そう心の中でつぶやくと、居座る理由を作るべく、頭をフル回転させ始めた。
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