聖夜の贈り物Verぷえ1章03

いつのまにか意識を失っていたらしい。
(というか…こいつは誰だ?)

体中の痛みに思わず目を開けた瞬間…
「おう、気づいたか。良かった。意識戻らなかったらどうしようかと思ったぜ」
と、降ってくる声は温かく優しい。


視線を向けると自分が寝かされているベッド脇にいるのは、さきほどの男。

天使…と思っていたが、身につけているのは紛れもない軍服。
しかも…敵対する西の国の、おそらく高位の軍人の…。
……考えたくはないが、自分がいるのは現在戦争真っ盛りの敵国、西の国らしい。

アーサーの方は幸いにして軍服などは着ていないし、魔術師としての装備も子猫を発見した時に脱ぎ捨ててしまっているので服装からは判別はつかないだろうが、拾われたであろう場所が東西の国の戦場なわけだから、相手も自分が東の国の人間だという事はわかっているはずだ。

見たところ捕虜を収容しておくような施設には見えないが、実は自分が魔術の名門カークランド家の人間で東軍の兵だと言う事がばれていて、何か特別に尋問を受けるために隔離されているのだろうか?

現状が全く理解できず硬直したまま黙りこくっているアーサーの様子を見て、男は何を思ったか、横たわったままのアーサーの頭をソッとなでた。
「もう大丈夫だぜ。ここは安全だからな。
大人の戦争に子供巻き込んでごめんな。怖かったよな」

…ばれてはいないらしい…。
が、やはり状況がわからない。

確か自分は子猫をかばって怪我をして…おそらくその後意識を失ったはずだ。
しかし相手が敵国の人間である以上、うかつな事は言えない。

藪蛇にならないように情報を聞き出すには…と、頭を悩ませた結果、出た言葉は
「お前誰だ?俺はどうしてここにいるんだ?」
というシンプルなものだったが、それは限りなく正解に近かったようだ。
男は本当に申し訳なさそうに、
「ごめんな」
ともう一度謝った後に、話し始めた。

要約すると、男は今日の戦いに参戦していて、停戦後帰路につきかけるも、落とし物を探しに戻った時、何かを訴えるように猫にまとわりつかれてついて行ってみると、どうやらその猫の子供らしい子猫が血まみれのアーサーに寄り添うようにして鳴いていたという。


「俺様がお前を抱えあげたら、その猫の親子も安心したみたいに離れていったんだ」

男の言葉にとりあえずあの子猫が無事だった事を知ってホッとするが、そこで言葉を切ってジッとこちらを見ている男の視線に、アーサーは再び緊張を取り戻した。



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2 件のコメント :

  1. 2話と3話が同じになっているようです~

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    1. ご報告ありがとうございます。
      修正させて頂きました。

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