そんな事を考えていてすっかり寝不足な頭でそれでも学校に行くと、朝っぱらからまた今度はテニス部の候補者松野未沙に”ファントム”の脅迫状が送りつけられたと、テニス部部長が駆け込んでくる。
終わったかと思っていたらまだ続いていたらしい。
「またか…」
とりあえずその脅迫状を回収。
他の2枚と見比べた。
サッカー部に送られた物と寸分違わぬ便箋と全く同じワープロの文字と文章。
そして”ファントム”という記名。
アオイに花が届き、サッカー部の候補者筒井舞花に脅迫状が届いてもう2日たつ。
そしてフロウに花が届いて一日か。
アオイとフロウは普通に花を飾り、筒井舞花は別に参加辞退もしていないが、これと言って何も変わった事はない。
いたずらなんだろうか…。
コウは考え込んだ。
アオイとフロウのカードはとにかくとして、もし…今回のミスコンの誰かを優勝させたいがために”ファントム”を名乗る者が脅迫状を送ったと仮定する。
最初の筒井舞花の脅迫状は彼女が辞退していないという事で意味をなしていない事はわかるはずだ。
そこで普通なら”それが脅しではないとしらしめる為に彼女に対して行動を起こす”もしくは”脅迫の効果がなかったものとしてあきらめる”の二択ではないだろうか。
なのに何故その効果のない脅しをさらに続けるのか…。
謎だ…。
「難しい顔してるじゃないか、名探偵。」
2通の手紙と2枚のカードを目の前に考え込んでいるコウをからかうように和馬が声をかけた。
コトリと机にコーヒーが置かれる。
「どこぞの愚民達のようにインスタントじゃないぞ。この俺様がわざわざミル持参で今ひいていれたブルーマウンテンだ。心して飲めよ」
そんなもの…持って来ていいのだろうか…という疑問は持たないでおこう。
コウは礼を言うと、その香り高いコーヒーに口を付ける。
「しっかり解決しろよ。俺は勝てる勝負を中止されるなんて事はまっぴらごめんだ。」
和馬はそう言ってクスリと笑うと仕事に戻って行った。
理由…よりも確実なのはまず証拠か…。
コウは先日もらった加藤の携帯に電話をかけた。
『おう、碓井どうした?』
「加藤さん…実はお願いがあるんですが…よろしいでしょうか?」
コウが言うと
『ああ、なんでも遠慮なく言え。そのために連絡先教えたんだからな』
と、加藤は請け負ってくれる。
「ありがとうございます。実はある物証についた指紋を調べて頂きたいんですが…これからお時間頂く事は可能でしょうか?もちろん加藤さんがお忙しければ代理の方でも良いんですが…」
一応…相手は多忙な身だ。そう気遣うコウだが、加藤は
『水臭い事言うな。物証受けとる時間くらいは取ってやる。』
と、待ち合わせ場所を指定した。
「悪い、和馬。俺どうしても外せない用があってこれから抜ける。今日の面会は午後だよな?
それまでには戻るから」
言ってコウはカードと手紙を念のためアオイとフロウに届いた花を包んでいた紙とリボンをいれた鞄に放り込むと、大急ぎで学校を抜け出した。
そのまま有楽町線桜田門まで。
改札につくとまた加藤に連絡をいれる。
本庁まで行った方が手間をかけないですむのだろうが、万が一知り合いに目撃されて親にばれるのは怖い。
連絡をいれて5分。加藤がくると、コウは
「お呼びたてして申し訳ありません。まだ実害がない以上、極々個人的なお願いになるので」
と言いつつ、軽く事情を説明して物証を渡す。
加藤は
「そういうことならな。これが事件に発展する可能性もあるわけだし、まかせろ」
と、それを受けとりつつ請け負ってくれた。
そして
「せっかくここまで来たんだから何か飲んで行くか?」
と言ってくれるが
「いえ、これからまた恐怖の面会です」
とコウがいうと、納得して苦笑した。
「ま、別にお前は警視庁(うち)に来るんだから他の奴らの機嫌取る必要もないんだけどな」
と言いつつも、
「頑張れよ」
と見送ってくれる。
コウはそれに礼を言うと、また学校へとUターンした。
戻るともう昼で、慌ててやはりフロウの持たせてくれた昼食を食べると、また午後は連続で面会だ。
色々考える間もなくやっぱり時間が過ぎて行く。
そして6時…和馬と佐藤はもう帰り、コウと相田もそろそろ帰り支度を始めていると、加藤からメールが入った。
指紋について結果が出たらしい。
(…これは…)
その結果にコウが呆然とした瞬間、いきなり携帯が振動した。
ユートからだ。
『もしもし、コウ?!なんかアオイから連絡行ってない?!』
焦った声でいうユートに事情を聞くと、ついさっき、いきなりユートの所にアオイから誰かに追いかけられているという電話がかかったっきり電話がプツリと切れたと言う。
「まじ…か」
青くなるコウ。
「とりあえず…俺加藤さんに連絡したあとかけつけるから、いったん一条家に集合なっ」
コウはそういうと電話を切って加藤に連絡を取った。
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